帰還者や移住者が安心して生活し続けるためには、地域医療の充実を図ることが欠かせない。県は福島医大などと連携を深め、施設整備と医療人材の確保の両面を着実に進めていくことが重要だ。
医療再生の現状と課題
県は東京電力福島第1原発事故後、双葉地方8町村と田村市都路地区、川俣町山木屋地区、南相馬市小高区、飯舘村の医療再生を重点的に進めてきた。3月1日現在、これらの地域で活動を再開した病院、診療所、薬局などの医療機関は計47施設で、原発事故前の医療機関数と比較すると、再開率は35.6%にとどまっている。
救急対応ができる県ふたば医療センター付属病院(富岡町)を軸に、各地に診療所がある体制をつくったものの、専門的な診療などは他地域との連携でしのいでいるのが現状だ。県は、施設整備や運営費を支援する事業などを活用し、かつて被災地で診療していた医療機関の再開と、新たに被災地で開院しようとする医療機関の誘致に全力を尽くす必要がある。
後継医療機関の整備
双葉地方の関係者が医療環境の向上に期待するのは、休止している県立大野病院(大熊町)の後継医療機関の整備だ。県の基本計画では、福島医大の付属病院とし、病床数は開院当初は100床前後、復興の進展などを踏まえながら段階的に250床まで増やす考えだ。診療科は最終的に内科や外科、整形外科、脳神経外科など20科とすることを目標とする。
ただ、開院は早くても2029年度以降となっている。県は本年度から、看護師の確保に向け、新病院での勤務を条件に返済を免除する修学資金貸付事業を始めた。町村長や住民からは、開院の前倒しを望む声も上がっている。県は設計・工事の最適化や人材確保の準備を進め、可能な限り早期の開院を目指してほしい。
ふたば復興診療所の廃止と新たな運営
県は、後継医療機関の開院にあわせて、県立のふたば復興診療所(楢葉町)を廃止するが、建物については楢葉町に無償譲渡することが決まった。町は公設民営方式で、現在の施設を活用して診療所を運営する予定だ。県は、双葉地方南部の地域医療を担う中核施設として、町の取り組みを後押ししてもらいたい。
介護福祉人材の不足と包括的な環境づくり
県などが3月に開いた医療体制を考える検討会では、被災市町村から介護福祉の人材も不足しているとの指摘があった。介護、福祉の機能がなければ、地域で高齢者らを支えることはできない。県には、両分野での人材確保も進めることで、健康増進から医療機関での受診、地域でのリハビリまでを包括する環境づくりを求めたい。



