救急隊の蘇生中止方針、全国で241消防本部が文書化 終末期医療の意思尊重が拡大
がんや老衰などで終末期を迎えた高齢者らが蘇生措置を望まない意思を事前に示していた場合、119番で到着した救急隊が、かかりつけ医などの指示に基づいて措置を中止できる方針を文書化する消防本部が増加している。全国で少なくとも241の消防本部がこのような方針を策定済みであることが、日本臨床救急医学会の調査で明らかになった。
調査結果の詳細と背景
同学会が2025年2月から3月にかけて実施した調査によると、全国720消防本部のうち570本部が回答。そのうち241本部(42%)が蘇生措置の中止を認める方針を既に策定していた。この方針は、心臓マッサージなどの蘇生措置を望まない本人の意思が書面や家族の話で明確になった際、一定の条件下で中止を許可する内容となっている。
特に注目すべきは、方針文書化の時期である。2016年以前に同様の方針を文書化した消防本部は39だったが、2017年以降は200と大幅に増加した(時期不明が2)。この急増は、同学会が2017年に中止する際の標準的な手順を盛り込んだ提言を発表したことが背景にあると見られる。
具体的な実施条件とオンライン指示の活用
方針を策定した消防本部のうち、170本部が蘇生中止に際してかかりつけ医によるオンライン指示を必須としていた。これは、迅速な判断が求められる救急現場において、遠隔医療技術を活用して適切な医療判断を支援する取り組みである。
この方針は、「人生の最終段階」を迎えた人の意思を尊重する動きの広がりを反映しており、医療現場だけでなく救急システム全体で終末期ケアのあり方が見直されていることを示唆している。患者の尊厳を守りながら、無意味な延命治療を避ける社会的合意が進んでいる。
今後の展望と課題
蘇生中止方針の文書化は、救急隊員の負担軽減や医療資源の適正配分にも寄与すると期待される。しかし、本人の意思確認の精度向上や家族との連携強化など、実施面での課題も残されている。今後は、より多くの消防本部がこの方針を導入し、全国的な標準化が進むことが求められる。
この調査結果は、高齢化社会が進む日本において、終末期医療の在り方が多角的に議論されるきっかけとなるだろう。救急医療と緩和ケアの連携を深めることで、患者中心の医療提供がさらに推進されると見込まれる。



