東京・荒川区に店を構えるドールハウス専門店「ミニ厨房庵(ちゅうぼうあん)」は、本物さながらの精巧なミニチュア作品で知られています。同店の作品は、模型の域を超え、まるでそこに暮らしの匂いがただようかのようなリアリティーを持っています。
家族で分業する小さな世界
レストランの厨房を精巧に再現したドールハウス。フライパンで焼かれるハンバーグは、直径わずか1センチほどの皿に盛られ、じゅわっと音を立てて焼き上がるような臨場感があります。これらの作品は、河合行雄さん(76)を中心に、妻の朝子さん(76)、娘のあさみさん(51)の家族3人が分業で作り上げています。
河合行雄さんは、かつて金属加工業を営んでいました。約20年前、ドールハウスが趣味だった妻朝子さんに小物の製作を頼まれたのがきっかけで、のめり込むようになりました。展示会に出品すると来場者から高い評価を受け、驚きとやりがいを感じたと言います。現在は、河合さんが鍋などの金属製品を担当し、朝子さんとあさみさんが家具や粘土細工を手がけています。
本物へのこだわり
「初めの1年間は試行錯誤の連続でした」と河合さんは振り返ります。ミリ単位の技巧から生まれる作品は、本物と同じ素材と構造に徹底的にこだわっています。例えば、フライパンのミニチュアは金属加工の機械で直径1ミリの穴を開け、柄を取り付けるなど、細部にまで手を抜きません。
ドールハウスは主に12分の1サイズで空間を表現します。16世紀のドイツで発祥したとされ、欧米では美術工芸品としての地位を確立しています。河合さんの手がける加工の難しいステンレス製品は、海外の愛好家からも注目を集めています。
量産時代にあえて手作業
3Dプリンターによる量産が容易になった現代でも、河合さんは「本物」と同じ素材、構造にこだわり続けています。「どれだけ自分の気持ちを込められるか」と自問自答を繰り返し、小さな世界で「本物」を超える日を夢見ています。
店内には、カウンターのレーンが実際に動く回転ずし店のミニチュアや、海鮮居酒屋の内部を再現したドールハウスなど、約3500点の作品が並びます。これらの作品はネット販売も行っており、肉切り包丁は1650円、ティーポットは2420円(税込み)で購入できます。一部商品は受注後の生産となります。
「ミニ厨房庵」は、本物へのこだわりと家族の愛情が詰まった、まさに「小さな世界」の魅力を発信し続けています。



