イラン攻撃で遠隔地の戦略基地に注目集まる
米国によるイラン攻撃の影響が、約5000キロメートルも離れたインド洋のチャゴス諸島にあるディエゴガルシア島の基地に及んでいる。この基地は英国と米国が共同使用する戦略的要衝で、湾岸戦争やイラク戦争など過去の紛争でも重要な拠点として機能してきた。現在、インド洋では米国、中国、インドの三か国による勢力争いが激化しており、地元の観光地では「ミサイルが飛んでくるかもしれない」といった風評が広がることを懸念する声が強まっている。
トランプ大統領が英国の対応を批判
トランプ米大統領は3日、今回のイラン攻撃において、スターマー英首相がディエゴガルシア基地の使用に消極的だったことを強く批判した。「英国は、あの島を巡って非協力的だった」と述べ、代替の着陸場所の検討に数日を要したと指摘した。この発言は、米英間の緊密な連携に影を落とすものとして注目されている。
基地の返還問題と大国の駆け引き
ディエゴガルシア基地は大型爆撃機の発着が可能な滑走路を備え、中東地域での紛争対応の拠点として長年使用されてきた。しかし、チャゴス諸島を領有する英国は昨年5月、モーリシャスへの返還協定に署名。基地は99年間維持されることになっているが、トランプ大統領は今年に入り、この返還に強い反発を示している。
一方、インド洋周辺ではインドと中国の勢力争いが顕在化している。インドはモーリシャスのアガレガ諸島に新たな基地を建設中で、首都ポートルイスの港には先日、インド海軍のフリゲート艦が停泊していた。常備軍を持たないモーリシャスは、インドとの連携を通じて中国の影響力を牽制する意図があると見られている。
中国もインド洋各地で海軍の寄港地を整備しており、インド洋の安全保障に詳しい専門家は「中国にとって、インド洋は有事の際のサプライチェーン確保と外国海軍の介入阻止の両面で極めて重要だ」と指摘する。このように、大国間の駆け引きが複雑に絡み合う状況が続いている。
地元経済への風評被害を懸念
大国の動きに対し、地元住民は経済への悪影響を強く懸念している。ポートルイスで衣服販売店を経営する70歳の男性は、「ミサイルが飛んでくるという風評が流れれば、観光客は来なくなり、経済はがた落ちになる。米英は出ていってほしい」と語った。観光産業が重要な収入源である地域では、安全保障上の緊張が直接、生活に打撃を与える可能性が高い。
インド洋のディエゴガルシア基地を巡る情勢は、国際政治の複雑さを如実に示している。米国のイラン攻撃をきっかけに、遠隔地の基地が注目を集め、大国の勢力争いと地元経済の脆弱性が浮き彫りになった。今後も、基地の返還問題や各国の軍事的プレゼンスが、地域の安定と観光産業にどのような影響を与えるか、注視が必要だ。



