米国内政の行き詰まりと経済への波及
米国とイスラエルがイランに対する攻撃を開始した。この大規模な軍事作戦は、経済に甚大な影響を及ぼす可能性が高い。なぜ、トランプ政権はこのような決断に踏み切ったのか。その背景には、内政上の深刻な行き詰まりが存在する。国際経済学者の竹森俊平氏が、トランプ政権が直面する内政問題を詳細に解説する。
FRB次期議長人事の停滞と金融市場への影響
トランプ大統領は、1月30日に元FRB理事のウォーシュ氏を次期議長候補として指名した。ウォーシュ氏は、FRBの量的緩和により金融機関が過剰な現金を抱え、無謀な投資に走ることがインフレの原因であるという自説を主張している。彼は、FRBが資産売却を通じて現金を吸収すればインフレが収まり、大統領が望む短期金利の引き下げが可能だと述べている。
しかし、金融市場は現金吸収を長期金利の上昇につながる金融引き締めと見なしており、ウォーシュ氏指名後にはドル高が進行した。この動きは、市場の懸念を反映している。
承認審議の遅延と政治的要因
当初、利下げ推進派のハセット国家経済会議委員長が本命と見られていたが、ウォーシュ氏の指名は一般に歓迎された。しかし、承認審議は停滞している。その一因は、トランプ大統領とパウエル議長との長きにわたる確執にある。
1月11日、パウエル議長はFRBの建物改修費用超過に関連して司法省から召喚状を受けたと報告し、「連邦政府による金融政策への介入」と批判した。この発言は、通常は冷静なパウエル氏としては異例のものであり、大きな反響を呼んだ。
この影響で、米議会上院銀行委員会の承認審議が停止している。同委員会では共和党が民主党を2議席上回っているが、共和党のティリス上院議員が「司法省がFRBへの法的追及を止めるまで、いかなるFRB人事も承認しない」という立場を取っているため、審議が始まらない状況だ。5月にパウエル議長の任期が満了するが、交代人事が間に合わなければ、パウエル氏が臨時議長を続ける可能性が高い。
トランプ関税の負担と米国民への影響
ニューヨーク連邦準備銀行は2月12日、トランプ関税による経済損失の約9割が米国の消費者と企業によって負担されているという研究結果を発表した。これは、外国の生産者が全費用を負担し、米国民の負担はないとするトランプ大統領の主張を明確に否定するものだ。
ハセット氏は2月18日、ニューヨーク連銀を懲罰すべきだと述べた。しかし、最近の多くの研究は米国民の負担の存在を裏付けており、一つの研究では追加関税負担が小売価格に転嫁できない米中小企業に集中する傾向が明らかになっている。
カナダへの関税撤回決議と超党派の動き
昨年3月、米国は自由貿易協定を結ぶカナダに対し、1977年制定の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を課した。しかし、隣接する米国の州への被害が大きいこの関税を撤回する決議案が、2月11日に下院で可決された。
大統領の拒否権発動が見込まれるものの、下院では6人の共和党議員が造反し、超党派決議が成立した意義は大きい。昨年10月末には、上院ですでにカナダとブラジルへの関税を撤回する決議案が可決されている。これらの動きは、関税政策に対する国内の反発が強まっていることを示している。
竹森俊平氏は、これらの内政上の行き詰まりが、トランプ政権の外交政策、特にイランへの軍事作戦に影響を与えている可能性を指摘する。経済的混乱が拡大する中、今後の米国内政の展開が国内外から注目されている。



