米中覇権争いで切り札に成長した中国レアアース、絶対的優位の築き方
米中覇権争いで切り札に成長した中国レアアースの戦略

中国の習近平政権は昨年、レアアース(希土類)の輸出規制を外交カードとして活用し、関税を武器とするトランプ米大統領から税率引き下げの譲歩を引き出した。国際エネルギー機関によれば、中国は世界のレアアース埋蔵量の5割、採掘量の6割、精錬量の9割を占めており、その絶対的優位はどのように築かれたのか。今月中旬に予定される米中首脳会談を前に、中国のレアアース戦略を読み解く。

レアアース産業の集中と強化

「資源で国に報い、レアアースで国を強くする」という赤いスローガンが、中国南東部・江西省贛州市のレアアース関連工場に掲げられている。この地域は世界の重希土の約7割を産出し、近隣には精錬工場が立ち並ぶ。2020年に設立された中国科学院贛江イノベーション研究院は、年俸120万元(約2800万円)以上の好待遇で800人以上の研究者を集め、中国政府は採掘や精錬だけでなく、磁石や材料などサプライチェーン全体での優位性を固めるために投資を続けている。

技術と特許で世界をリード

中国が保有するレアアース関連特許は4千件以上に上り、500件未満の日米を大きく引き離す。技術流出を防ぐため、中国当局はレアアース専門家のリストを作成し、一部には海外渡航を防ぐためにパスポートを提出させたと米報道で伝えられている。

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歴史的背景と戦略の転換

中国は早くからレアアースの重要性を認識しており、1992年には鄧小平が「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と発言した。しかし、長らく明確な戦略を欠き、乱開発による環境破壊や安値販売が横行した。2000年代から管理が強化されたものの、2010年の尖閣諸島を巡る日本への輸出規制時にも密輸が可能だったという。

習近平主席の視察が転機に

2019年5月20日、習近平主席が贛州市を視察し、レアアースを「重要な戦略資源」と位置づけた。この視察は、第1次トランプ政権が華為技術に制裁を科した直後で、米中貿易協議の最中に行われた。習主席は長征記念公園を訪れ、「新たな長い道のりが再び始まった」と訴え、米中対立の長期化への覚悟を示した。同月下旬の人民日報は「米国は中国の反撃能力を見くびるな」という評論でレアアースに言及し、これによりレアアースは外貨獲得手段から米国との覇権争いにおける「切り札」へと格上げされた。

業界再編と統制の強化

国内では「小、散、乱、弱」と形容されたレアアース業界の再編が加速し、乱立する民間採掘場は姿を消した。現在、採掘は贛州市の国有企業「中国稀土集団」と、内モンゴル自治区政府傘下の「中国北方稀土」の2社に集約されている。採掘関係者は「国の管理は本当に厳しい」と語る。

日米の脱中国依存の試み

米国や日本は中国への依存脱却を目指しているが、鄧小平の通訳も務めた中国シンクタンク「全球化智庫」の副主任・高志凱氏は「日米の努力は少なくとも10年は成功しない。中国は採掘、分離、精錬のすべてで絶対的な優位がある」と断言する。

レアアースの基礎知識

レアアースは17種類の元素の総称で、比較的埋蔵量が多い「軽希土」と抽出が難しく希少な「重希土」に分類される。重希土は電気自動車の高性能モーターや精密機器に不可欠で戦略的価値が高い。中国では軽希土が北部の内モンゴル自治区、重希土が江西省など南部で産出され、「北軽南重」と呼ばれる。中国は採掘量の多さに加え、高度な精錬技術で世界のサプライチェーンを主導している。

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