中東情勢の不透明感が強まる中、原油の安定供給に課題が生じていることを受け、愛知県の大村秀章知事や東京都の小池百合子知事らが2026年5月29日、水素社会の実現に向けた取り組み強化を求める緊急声明を首相官邸で高市早苗首相に提出した。この声明は、水素エネルギーの推進を通じてエネルギー安全保障の強化を図る狙いがある。
声明の主な内容
緊急声明では、以下の3点を重点的に要請した。
- GX経済移行債の水素・アンモニア施策への割り当て拡充と発行延長:脱炭素移行事業に充てられる国債について、水素関連施策への配分を増やし、発行期間を延長するよう求めた。
- 新たな投資枠での水素・アンモニア施策への十分な割り当て:国が創設を検討する新たな投資枠において、水素・アンモニア関連事業に十分な資金を割り当てるよう要請した。
- 「水素大動脈構想」など自治体と産業界の連携支援:水素・アンモニアの社会実装を進めるための基盤整備や、地域間連携を促進する取り組みへの支援を求めた。
首相とのやり取り
首相との会談は非公開で行われたが、要請後の記者会見で大村知事は「首相からは『特定のエネルギー源だけに依存せず、取り組み強化をしていきたい。危機管理の観点からも重要だ』との力強い発言をいただいた」と説明した。また、小池知事は「次のエネルギー源としての水素を改めて見直し、大きな観点から取り組むべきではないかとお話しした。賛同意見をいただき心強い」と述べ、首相の理解を得られたことに手応えを示した。
参加自治体
緊急声明は、愛知県、東京都のほか、北海道、福島県、神奈川県、山梨県、兵庫県、福岡県の8都道県と、川崎市、名古屋市、福岡市の3政令市の連名で提出された。これらの自治体は水素エネルギーの利用促進に積極的に取り組んでおり、連携して国に働きかける形となった。
背景と意義
中東情勢の不安定化は原油価格の高騰や供給途絶リスクを高めており、日本にとってエネルギー安全保障上の大きな課題となっている。水素エネルギーは、製造時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目され、脱炭素社会の実現にも貢献する。今回の声明は、こうした危機感を背景に、自治体レベルから国に対し具体的な政策強化を促すものであり、今後のエネルギー政策の方向性に影響を与える可能性がある。
(神谷円香)



