日本語の会話は世界で最も「せっかち」? 言語学者が指摘する驚きの事実
ネット配信で人気の「ゆる言語学ラジオ」のスピーカーであり、自らを「言語オタク」と称する編集者の水野太貴氏(30)が、日本語の興味深い特徴について語った。同氏によれば、日本語は世界的に見て非常に「せっかち」な言語だという。この特徴は今後変化していくのだろうか。
会話の交代時間が世界最短の0.007秒
通常、会話では一方が話し終わるのを待って、他方が話し始める。この話し手の交代を「ターンテイキング」と呼び、交代に要する時間を世界の10言語で調査した研究がある。その結果、日本語話者は平均わずか0.007秒しかかかっていなかった。これは調査対象言語の中で最短の記録である。
一方、最も時間がかかったのはデンマーク語で、平均0.469秒。日本語の60倍以上の差がある。別の研究によれば、世界の諸言語の平均は約0.2秒かかっているという。話者交代の速さから見ると、日本語はまさに世界有数の「せっかち」な言語と言える。
なぜこんなに間が詰まっているのか?
0.007秒という数字はあくまで平均値であり、実際のデータには幅がある。相手が話し終わるのを待たずに、発話が完了する約0.5秒前から並行して応答しているケースも多いことがデータから示されている。つまり、日本語の会話では食い込み気味の応答が頻繁に行われているのだ。
英語のようなSVO(主語・動詞・目的語)語順の言語とは異なり、日本語はSOV(主語・目的語・動詞)の語順を取る。肯定・否定・疑問などの目印は文末に現れる。それにもかかわらず、日本語話者は相手の「話し終わり」を敏感に察知して、即座に会話を始められるのである。
今後の日本語会話の行方
日本語がまだ上手でない外国人や、AIの自動応答が増加した場合、この「せっかち」な特徴はどうなるだろうか。会話をターンの奪い合いと捉えれば、速い方が有利と言える。さらに、人間には間を置かずに断言する発言に説得力を感じるという認知特性がある。
水野氏は「早いのが偉いわけでは決してない」としつつも、「じっくり考えて、ゆっくり応答する方がかっこいい」という価値観が社会に定着しない限り、気長に待つ方向への変化は考えにくいと指摘する。日本語話者は今後も、食い気味に入れ替わりながらコミュニケーションを続けていく可能性が高い。
水野太貴氏プロフィール:YouTubeやPodcastで配信中の「ゆる言語学ラジオ」の話し手。著書にターンテイキングを掘り下げた『会話の0.2秒を言語学する』、共著に『復刻版 言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』などがある。