フォーレ室内楽全曲マラソンコンサート、約10時間の音楽の旅
フォーレの作品には、フランス音楽の典雅なイメージがつきまとうが、実は晦渋で、一見愛想のない作品にこそ本領が隠されている。今年の国際音楽祭NIPPONで開催された「フォーレ室内楽全曲マラソンコンサート」は、その真髄を体感する貴重な機会となった。計4公演、休憩を含めて約10時間に及ぶ一日がかりの凄まじい企画だ。
名手たちが奏でる切実な音色
演奏陣には、国内外から集まった名手がずらりと並んだ。彼らの手にかかると、作品が内包する切実さが残酷なほど炙り出される。金川真弓による「ヴァイオリン・ソナタ第2番」(ピアノ・阪田知樹)では、全身から音楽が噴き出すような激しい生への渇望が感じられた。一方、上野通明の「チェロ・ソナタ第2番」(ピアノ・北村朋幹)からは、出す音すべてに気骨があり、容易に捻じ曲げられない意志の力が伝わってくる。
抑制された情熱が紡ぐフォーレ一流の抒情
硬派な衣をまとっていても、内に秘めた情熱を抑制することでおのずとあふれ出るのが、フォーレ一流の抒情である。葵トリオの「ピアノ三重奏曲」では、秋元孝介のピアノが真綿にくるんだような音色でアンサンブルをまとめあげ、なんともエレガントな響きを生み出した。レグルス・クァルテットによる「弦楽四重奏曲」は、すみずみまで気を通わせてトーンをぴたりと合わせ、ストイックな演奏から複雑な音の綾に香気が立つような感覚を覚えた。
ソリストたちの鬼気迫る集中力
ヴァイオリニストで芸術監督の諏訪内晶子をはじめ、ソリストが一期一会で集結するアンサンブルには、常設楽団の緻密さとは違う味わいがあった。特に、諏訪内が第2ヴァイオリンを務めた「ピアノ五重奏曲第2番」では、客席に突き抜けてくる音の勢いや大胆な切り込み、相手の出方をとらえようとする集中力に鬼気迫るものを感じ、胸が熱くなった。
重量級の作品が並ぶ中、チャーミングな小品を挟んだ曲順の妙とハイレベルな演奏が相まって、完走どころかすっかり病みつきになって帰路についた。終演後はぐったりしながらも、もう一度最初から聴きたいと思わせるほどの感動を呼んだ。このコンサートは、横浜みなとみらいホールで開催され、クラシック音楽愛好家に深い印象を残した。



