逆境を力に変える歌声、76歳のシンガーが語る「さあ もういっぺん」の真髄
関西を拠点に活動するシンガー・ソングライター、豊田勇造さん(76)の代表曲「大文字」には、若き日の忘れられない体験が込められている。20代の頃、京都市で開催された「京都五山送り火」を背景にしたコンサート会場で、急な代役として出演した豊田さんは、観客からの罵声を浴びながらも、ギターをかき鳴らして歌い続けた。その時の感情が、今も歌詞に息づいている。
「男の背中で 大の字に山が燃える」
「大文字」の歌詞には、「男の背中で 大の字に山が燃える」「さあ もういっぺん さあ もういっぺん 火の消える前に」という力強いフレーズが繰り返される。これは、逆境に立ち向かい、決してあきらめない若き日の豊田さんの叫びそのものだ。現在も「まだまだ歌い続けたい」と語る豊田さんは、大阪市でのインタビューでその思いを明かした。
豊田さんとの出会いは、三十数年前にさかのぼる。広島県で勤務していた筆者は、知人の喫茶店で開かれたライブで初めてその歌声に触れた。その後、転勤した先々でチラシを見つけては聴きに行き、年齢を重ねても元気に活動する姿に励まされてきた。曲の魅力だけでなく、その生き様自体がファンに勇気を与え続けている。
世代を超えて響くメッセージ
昨年末、大阪市内で開催されたライブには、筆者とともに音楽好きの20代の後輩も同行した。5年前に高松市でのコンサートに連れて行った彼も、豊田さんの「大文字」に深く感銘を受けた様子だ。この曲が、若い世代にも自らを奮い立たせる力を持っていることがうかがえる。
ステージ上で豊田さんは、「まだまだ85歳まで歌う。いや、それ以上になっても続けたい」と力強く宣言。最後は「大文字」を熱唱し、会場を感動の渦に巻き込んだ。終演後、筆者が若い頃に作ったこの曲を今、どんな気持ちで歌っているのか尋ねると、豊田さんはこう答えた。
「コロナ禍の時はライブの再開を願うなど、その年齢、その時代ごとの『さあ もういっぺん』という思いを込めている」
時代や状況が変わっても、常に前向きな姿勢を歌に託す豊田さんの哲学がここにある。
奈良への思いと未来への誓い
豊田さんは、「また奈良にも歌いに行くから」と語り、今後も活動を続ける意欲を見せた。筆者と後輩は、それぞれの思いを胸に会場を後にしたが、豊田さんの元気な姿を見に行きたいという気持ちは一層強くなった。
76歳という年齢を感じさせないパワフルな歌声と、「さあ もういっぺん」というメッセージは、あらゆる世代に希望を与え続けている。豊田勇造さんの音楽活動は、単なるエンターテインメントを超え、人生そのものを鼓舞する力を持っていると言えるだろう。



