映画の舞台が現実に 神保町の電話ボックスがファンの聖地に
2026年2月21日夜、東京・千代田区神保町の大通り沿いにある公衆電話ボックスに、観光客らがスマートフォンを向けていました。中を覗くと、見慣れた緑色の公衆電話の上に、一輪のうすピンク色のガーベラの花が丁寧に置かれていたのです。
韓国からの大学生も「絶対に見たいと思っていた」
韓国から訪れた男子大学生(24)は「日本に来たら絶対に、この電話ボックスを見たいと思っていた」と語り、満足そうに撮影した写真を確認していました。長野県在住の女子大学生(21)は「印象的なので、SNS上では『映える』と思うが、アニメのことを知らない人は怖いと思うかもしれない」と複雑な表情を見せました。
『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』がきっかけ
観光客が集まる理由は、2025年9月に公開され、興行収入100億円を超える大ヒットとなったアニメ映画『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』にあります。作中で主人公のデンジが電話ボックス内でヒロインのレゼと出会い、一輪のガーベラを渡す感動的なシーンがあり、周囲の風景や店舗などから、モデルとなったのがこの神保町の電話ボックスだとファンの間で話題になりました。
これにより、「聖地巡礼」の一環として、多くのファンが電話ボックスにガーベラの花を持ち込むようになったのです。映画公開から約2カ月後の11月中旬には、既に花が置かれているのが確認され、その後も継続的に新しい花が供えられる現象が続いています。
NTT東日本が対応に追われる
NTT東日本によると、電話ボックス内に花が置かれる状況が続いたため、「公衆電話ボックス内や周りに花束等を置かないでください」と注意を呼びかける貼り紙を掲示しました。担当者はファンの気持ちを理解しつつも、「ご来訪の際はお花や私物などをその場に残されないようご配慮いただけますと幸いです」と丁重に呼びかけています。
汚れがひどい場合や利用者からの苦情があった場合には、清掃の頻度を増やして対応しているとのことです。公衆電話としての本来の機能を維持しつつ、観光地化した現場の管理に苦慮する様子がうかがえます。
専門家は「記憶や物語が付与された場所」と分析
滋賀大学教授で犯罪予防・環境心理学が専門の島田貴仁氏は「『聖地巡礼』はいまや一つの観光資源で、遠方や海外から足を運ぶファンの高揚感は、想像に難くありません」と指摘。「この現象は、環境心理学の観点からも興味深いものがあります。人は単なる『空間』ではなく、記憶や物語が付与された『場所』に引き寄せられます」と分析しています。
映画やアニメの舞台となった場所が「聖地」として観光資源化する現象は近年増加しており、地域経済にプラスの効果をもたらす一方で、近隣住民への迷惑や施設管理の問題も浮上しています。神保町の電話ボックスは、現代のポップカルチャーが生み出す新たな社会現象の一端を象徴する現場となっているのです。
