愛知県稲沢市一色下方町にあるJA愛知西産直広場内の鮮魚店「魚福」は、海のない地域でありながら、新鮮な魚介類を提供する人気店だ。店主の福田啓将さん(43)は、東京生まれ、横浜育ちで、元コンサルティング会社出身という異色の経歴を持つ。スーツを着て六本木を歩いていた彼が、なぜ魚屋になったのか。その背景には、強い情熱と努力がある。
コンサルタントから魚屋へ、意外な転身
福田さんは、仕事で東北や能登を訪れる機会が多く、海鮮料理に魅了された。ある日、稲沢市でも美味しい鮮魚が楽しめると聞きつけ、訪れたのがきっかけで、JA関係者から鮮魚店の開店を依頼された。「魚のさばき方も知らないのに」と戸惑いながらも、「面白そうだ」と10年前に店をオープンした。最初は独学で包丁さばきを身につけ、今では鮮やかな手つきで天然マダイをおろすまでになった。
厳しい市場での奮闘
しかし、魚屋の世界は想像以上に厳しかった。市場関係者は新参者の福田さんに冷たく当たった。「このヤローと思って、誰よりも早く市場に行くことにした」と振り返る。毎日、競りが始まる3時間前の午前1時半には市場に到着し、卸売業者と茶を飲んで顔を売り、良い魚を仕入れる伝手を築き上げた。現在は知多や三河、名古屋の市場に毎日通い、とれたての鮮魚を仕入れている。
人気メニューと昭和の魚屋を目指して
店頭には旬の鮮魚や干物、水産加工品が並び、奥にはランチ席も用意されている。人気メニューは刺し身が盛りだくさんの「大将のオススメ丼」と、干物から好きな一品を選んで焼いてもらえる「干物定食」。さらに、名物の「魚屋のまかないカレー」も好評だ。常連客の一宮市在住の女性(64)は、「サケの切り身は脂のりが良いし、大将はとてもフレンドリーで、週に1回は通っている」と語る。
福田さんが目指すのは「昭和の魚屋さん」。商品以上に客との会話を大切にし、調理方法のアドバイスや魚の下処理、さらには客が釣った魚をさばくこともある。ただし、最近は店の混雑が激しく、なかなか話せない日があるという悩みも。それでも、「この商売が好き。納得いくまで客を満足させたい」と、奮闘は続く。
店舗情報とエピソード
魚福は、稲沢市一色下方町218の1にあり、営業時間は午前9時から午後4時、ランチは午前11時から午後2時まで。水曜定休。また、知多市の平和堂知多信濃川店内にも店を構える。ちなみに、中日ドラゴンズの福田永将2軍コーチは福田さんの実弟で、時々自ら釣った魚を持って店に顔を出すという。問い合わせは0587(36)6780まで。



