USJ開業25周年、黒川CMOが語る成長戦略と未来への展望
大阪市此花区に位置するテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が、2026年3月31日をもって開業から25周年という節目を迎えました。来場者数の低迷に苦戦した時期もありましたが、米ハリウッド映画から日本発のIP(知的財産)を活用した戦略への転換によって、見事な回復を遂げています。この節目の年に、最高マーケティング責任者(CMO)を務める黒川浩延氏に、パークの経営戦略や今後の展望について独占インタビューを行いました。
ブランドの進化と戦略転換が成功の鍵
黒川氏は、USJの好調な業績について次のように分析します。「世の中やビジネスの状況に応じてブランドを絶えず進化させてきたことが重要です。同じことを続けていては成功はありません。少しずつ変化を重ねてきたことが、一つの成功要因だと考えています」と語ります。
開業当初は、ハリウッド映画の世界観を大阪に再現する形でスタートしましたが、テーマパークの巨塔であるディズニーランドには及ばないという印象が強かったと振り返ります。そこで2012年、戦略を大きく転換。「世界レベルのエンターテインメントはハリウッド映画だけではありません。日本にはアニメやゲームなど多様なコンテンツが存在します。世界最高のコンテンツを集めたパークという新たな方向性に舵を切ったのです」と説明します。
IP活用のポイントと集客拡大の戦略
2014年に新エリアとしてオープンした「ハリー・ポッター」は、強力なコンテンツとして大きな効果を発揮しました。黒川氏は「このエリアは訪日客、家族連れ、20代の男女など多様な層を引き寄せ、パーク全体を底上げする役割を果たしました」と評価します。
IP活用における重要なポイントとして、「国内客と海外客の両方に人気があること、特定の層だけではなく幅広い層にアピールできること、そしてライセンス保有先の世界観とUSJの世界観がうまく調和すること」を挙げています。基本的には、IPの世界観に没入できる体験の創出を目指していると強調します。
マーケティングの徹底と驚きの創造
USJはマーケティングに強みを持つ企業として知られています。黒川氏によれば、マーケティング部署には150人以上が在籍し、市場やゲストのニーズを徹底的に理解することに注力しているとのことです。「顧客の満足度は日々チェックしています。良かった点、悪かった点、改善点を、これほどまでに詳細に確認している組織は珍しいかもしれません」と語ります。
そして、最も印象的な言葉として、「会社としては消費者が求めるものを作ってはいけないと考えています。消費者が求めるものを超えない限り、真の驚きは得られないからです」という哲学を明かしました。これは、単なるニーズの充足ではなく、期待を上回る体験の提供が重要であるという考え方を示しています。
リピーター獲得の仕掛けと人材育成
USJの来場者にはリピーターが多く、国内客の8割、海外客の3割が再訪客だといいます。黒川氏は「毎回来るたびに新しい発見を提供しなければ、再訪は期待できません」と指摘。そのために季節イベントに力を入れており、日本のIPを中心とした「クールジャパン」をテーマに、春夏秋冬に閑散期の1月を加えた「5シーズン制」を採用しています。
人材育成については、「私たちはホスピタリティーのビジネスであり、ホテル業界と同様です」と説明。全従業員1万5000人に「ブランドブック」を配布し、働く上での思想を共有しています。例えば、「自分がワクワクしないとゲストもワクワクしない」、「くだらないことが重要」、「固定概念をぶっ飛ばそう」といった内容が含まれています。
さらに、「クルー イズ No.1 アトラクション」という考え方を掲げ、従業員自身が最高のアトラクションであるという意識を持って接客に臨むよう指導しています。実際に、接客を理由に再訪を希望する声も多いそうです。
今後の課題と展望
エリア拡張については、「将来的には拡張を検討する必要がありますが、それ以前にアトラクションの新陳代謝や未利用地の活用など、まだ余地は残されています」と述べ、現状のリソースを最大限に活かす方針を示しました。
黒川氏は、「手堅く成功する事業と、将来のために挑戦すべき事業をバランスよく組み合わせながら進めています」と総括。ハリー・ポッターや任天堂のエリアは確実性の高い事業である一方、シーズンイベントなどは比較的リスクを取りやすい分野として位置づけ、成功すれば新たなアトラクションへ発展させる可能性もあると語りました。
USJは25周年という節目を迎え、3月3日には開幕セレモニーを開催。これまでの歩みを振り返るとともに、新たな飛躍に向けた決意を表明しました。黒川氏の言葉からは、変化を恐れず、常に進化し続ける企業姿勢が強く感じられます。今後も日本を代表するテーマパークとして、国内外のゲストに驚きと感動を提供し続けることが期待されます。



