老舗銭湯「鶴の湯」が27歳の新経営者で復活、地域の憩いの場を再び灯す
鶴の湯が27歳経営者で復活、銭湯文化を継承へ (03.04.2026)

老舗銭湯「鶴の湯」が27歳の新経営者で復活、地域の憩いの場を再び灯す

昨年夏に惜しまれながら廃業した東京都調布市の老舗銭湯「鶴の湯」が、新たな経営者を迎え、4日から営業を再開する。引き継いだのは、国内外1000軒以上の温浴施設を訪れたという「銭湯好き」の相良政之さん(27)。「銭湯文化をつなげたい」という熱い思いから、経営を決断した。

地域に愛された銭湯の歴史と廃業

高さ20メートル弱の煙突が目印の鶴の湯は、1950年代前半に開業したとみられる。この地域では銭湯が少なく、近隣住民にとって憩いの場として親しまれてきた。しかし、設備の老朽化が進み、昨年7月末に廃業に至った。周辺住民からは惜しむ声が多く上がり、地域の文化の一部が失われる危機に直面していた。

銭湯愛好家から経営者へ、相良さんの決断

福島県郡山市出身の相良さんは、18歳で府中市の一般企業に就職。鶴の湯を含む周辺の銭湯に通ううちに、店ごとに異なる特徴や魅力に気づき、深く興味を抱くようになった。銭湯を巡り、店主に話を聞いては感想をSNSに投稿するなど、積極的に活動。やがて「いずれ自分の銭湯を持ちたい」と考えるようになり、銭湯経営を代行する会社に転職した。

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転職7年目の昨年、鶴の湯の廃業を知った相良さんは、上京後すぐに通っていた思い出の銭湯がなくなることに胸を痛めた。「いてもたってもいられない」という気持ちから、会社を辞めて後を継ぐことを決断。事業承継の手続きを終え、今年2月から再出発に向けて動き始めた。

困難を乗り越えた修復作業と地域の支援

廃業期間が長引くと設備の老朽化がさらに進むため、再開時期を4月に設定。しかし、引き継いだ機器は想定以上に傷んでおり、ボイラーの役割を果たす平釜は壊れ、床下の木材は朽ち、配管は割れていた。設備を動かすと玄関まで水浸しになる状態で、浴槽に湯を張ることさえできない状況だった。

再開時期が迫る中、相良さんは当時住んでいた台東区から通うのをやめ、鶴の湯の2階に住み込んで修復作業に没頭。SNSでボランティアを募ると、約80人が集まり、長年鶴の湯に通っていた常連客も参加してくれたという。地域の温かい支援が、復活への原動力となった。

新たな魅力を加えた銭湯の再生

修復資金は日本政策金融公庫からの融資などを充て、平釜を入れ替え、新たにサウナや外気浴が楽しめるエリアを設置。高い天井を生かして広いロビーを確保し、ハーブティーやクラフトビールの販売も計画している。これにより、湯上がりに家族でだんらんを楽しむなど、多様な利用を促す。

営業時間は午前6時から翌午前1時までとし、家族連れから仕事終わりのサラリーマン、高齢者まで全世代が利用できるように配慮。原油高など経営への不安は残るものの、相良さんは「自分自身も銭湯でたくさんの元気をもらってきた。今度は自分が、地域の人に愛される鶴の湯を作って恩返ししたい」と語る。

都内の銭湯減少と行政の支援策

風呂付き住宅の普及や設備の老朽化などにより、都内の銭湯は減少傾向にある。公衆浴場(銭湯)を管轄する東京都生活安全課によると、2025年12月末時点での都内の銭湯数は417軒で、10年前の628軒から約3割減少した。

減少を食い止めようと、都は今年度から設備の更新費用補助を拡充。同課の小坂勉課長は「銭湯は公衆衛生に加え、地域交流や災害対応、文化発信など多様な役割を持つ。東京にとって大切な存在だ」と強調している。

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鶴の湯の復活は、単なる営業再開にとどまらず、地域文化の継承と活性化を象徴する事例として注目を集めている。相良さんの情熱と地域の支援が、老舗銭湯に新たな命を吹き込んだ。