90年前の太田の街並みが現代に蘇る 貴重な鳥瞰図が復刻版として販売開始
群馬県桐生市東で古書店を経営する奈良彰一さん(79歳)が、90年前の旧太田町(現在の太田市)の街並みを描いた貴重な鳥瞰図の復刻に成功し、このほど販売を開始しました。戦前の資料の多くが空襲で焼失する中、顧客からの熱い要望を受けて実現したこのプロジェクトは、往時の太田の繁栄を現代に伝える重要な取り組みとなっています。
顧客の思いがきっかけに 戦前の街の様子を後世に残す
昨年11月、奈良さんの古書店の常連客の一人が「当時の街の様子を後世に残したい」という強い思いから、自宅で大切に保管していた鳥瞰図の復刻を依頼しました。この要望を受けて奈良さんは、歴史的価値の高い資料を現代に蘇らせる作業に着手することになったのです。
松井天山が描いた貴重な鳥瞰図 戦前の太田の繁栄を伝える
復刻された鳥瞰図は、大正から昭和初期にかけて活躍した絵師・松井天山(1869~1947年)によって制作されたものです。奈良さんの調査によると、当時の町役場と町商工会が発注したとみられ、1936年に発行された貴重な資料です。
「群馬県太田町三勝金山高山大光院鳥瞰図」という表題が付けられたこの図面には、いくつかの特徴的な描写が見られます。
- 「金山城跡」や「子育て呑龍さま」で親しまれる「大光院」、「高山神社」などの名所が立体的に表現されている
- 役場や警察署などの官庁街が中心付近に配置されている
- 当時の東武鉄道太田駅付近の商店街には、店名を入れた建物が細かく描き込まれている
特に注目すべきは、日本最大級の軍用機メーカーであった「中島飛行機」の拠点があった太田の繁栄ぶりが、この鳥瞰図からはっきりと読み取れる点です。戦前の太田がどのような街であったかを知る上で、極めて貴重な視覚的資料となっています。
技術的な挑戦 劣化した原図から鮮明な復刻版へ
原図は寺社の木々や田畑の緑を基調とした4色カラー印刷で制作されていましたが、90年の歳月を経て用紙が劣化し、図柄や文字がかすれて見えにくくなっていました。この課題を克服するため、奈良さんは専門の写真家に依頼して入念な作業を進めました。
- 原図をA1判(横約84センチ、縦約59センチ)の大きさに拡大
- 色合いを丁寧に調整し、鮮明さを回復
- 今年2月に復刻版を完成させる
こうした技術的な努力の結果、往時の鮮やかさを現代に伝える復刻版が誕生したのです。
限定販売と今後の展望
復刻版の販売は限定300部となっており、いずれも税込み価格で提供されています。
- 図のみ:1,320円
- 額付き:8,470円
奈良さんは「現存が珍しい鳥瞰図の復刻版を通して、多くの方に往時の太田の姿を振り返ってほしい」と語っています。戦前の太田の街並みや産業の発展を知る貴重な資料として、地元の歴史愛好家や研究者から高い関心が寄せられています。
問い合わせは、太田市の書店ナカムラヤ(電話:0276・22・2001)か、奈良さん本人(電話:0277・22・7967)までとなっています。この復刻版は、単なる古地図の複製ではなく、地域の歴史を未来へ継承する重要な文化事業としての意義を持っているのです。



