老舗銭湯「鶴の湯」が新たな経営者で復活、修復作業とサウナ新設で地域の憩いの場を再生へ
昨年夏に廃業した東京都調布市の老舗銭湯「鶴の湯」が、新たな経営者を迎え、4日に営業を再開しました。客として通い、国内外1000軒以上の温浴施設を訪れた「銭湯好き」の相良政之さん(27)が、「銭湯文化をつなげたい」と経営を引き継ぎ、修復作業に奔走しています。
銭湯好きの若き経営者が夢を実現、地域との絆を大切に
福島県郡山市出身の相良さんは、18歳で府中市の一般企業に就職後、鶴の湯など周辺の銭湯に通ううちに、店ごとの特徴に魅了されました。銭湯を巡り、店主に話を聞いてSNSに投稿するなど、熱心に活動を続け、「いずれ自分の銭湯を持ちたい」と夢を抱くようになりました。その後、銭湯経営を代行する会社に転職し、経験を積みました。
転職7年目の昨年、鶴の湯の廃業を知った相良さんは、上京後すぐに通っていた銭湯がなくなることに胸を痛め、会社を辞めて後を継ぐことを決断。事業承継の手続きを終え、今年2月から再出発に向けて動き出しました。
老朽化した設備の修復に挑戦、ボランティアの力も借りて
廃業期間が長引くと設備の老朽化が進むため、再開時期を4月に設定しましたが、引き継いだ機器は想定以上に傷んでいました。銭湯の心臓部である平釜は壊れ、床下の木材は朽ち、配管は割れており、浴槽に湯を張ることさえできない状態でした。
再開時期が迫る中、相良さんは当時住んでいた台東区から通うのをやめ、鶴の湯の2階に住み込んで作業を開始。SNSでボランティアを募ると、約80人が集まり、長年鶴の湯に通っていた常連客も参加してくれました。修復資金は日本政策金融公庫からの融資などを充て、平釜を入れ替え、新たにサウナや外気浴が楽しめるエリアを設けました。
広いロビーと新サービスで、全世代が楽しめる銭湯に
高い天井を生かして広いロビーを確保し、ハーブティーやクラフトビールの販売も計画。湯上がりに家族でだんらんし、楽しんでもらうことを目指しています。営業時間は午前6時から翌午前1時までとし、家族連れから仕事終わりのサラリーマン、高齢者まで全世代が利用できるように配慮しました。
原油高など経営への不安は残りますが、相良さんは「自分自身も銭湯でたくさんの元気をもらってきた。今度は自分が、地域の人に愛される鶴の湯を作って恩返ししていきたい」と語っています。
都内の銭湯減少に歯止め、文化継承の重要性を強調
風呂付き住宅の普及や設備の老朽化などから、都内の銭湯は減少傾向にあります。公衆浴場(銭湯)を管轄する都生活安全課によると、2025年12月末時点での都内の銭湯数は417軒で、10年前の628軒から3割減少しました。減少を食い止めようと、都は今年度から設備の更新費用補助を拡充しています。
同課の小坂勉課長は「銭湯は公衆衛生に加え、地域交流や災害対応、文化発信など多様な役割を持つ。東京にとって大切な存在だ」と話し、文化継承の重要性を強調しています。



