名古屋城天守の小型昇降機、設置階素案の提示先送り 市「さらなるシミュレーション必要」
名古屋城天守の小型昇降機、設置階素案の提示先送り

名古屋城天守(名古屋市中区)の木造復元事業において、市がバリアフリー対応として導入を予定する小型昇降機について、何階まで設置するかの素案提示が先送りされることが明らかになった。市は当初、5月中に素案を示す予定だったが、検討が不十分であると判断した。これにより、2026年度中に予定していたバリアフリー対応の取りまとめは不透明となり、復元事業の進捗に影響を与えることは必至の状況だ。

検討課題と先送りの理由

市によると、史実に忠実な復元とバリアフリーを両立するため、各階のどこに昇降機を配置するのが最適かを探ってきた。しかし、木造復元天守に昇降機を設置した前例がなく、さらなるシミュレーションが必要と判断。緊急時の避難方法の検討なども十分でなく、スケジュールに合わせて無理に素案を出すのは適切ではないとの結論に至った。新たな提示時期は示されていない。

バリアフリー対応の経緯

事業のバリアフリー対応を巡っては、史実に忠実な復元を掲げた河村たかし前市長の下、市は2023年3月、大型エレベーターの代わりに天守の地階部分から1階に小型昇降機を取り付ける方針を示した。しかし、同年6月の市民討論会で参加者が障害者に向けて差別発言を行ったことで、復元事業が事実上、3年間中断している。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

復元に向けた文化庁への申請には、バリアフリー対応の方針決定が必要。市は、梁や柱を傷つけず、可能な限り上層階まで上がれる昇降技術を公募し、2022年に船舶向けの昇降機を開発する三菱重工業の子会社の提案を採用。2024年3月に6人乗りの試作機が完成し、現在は第三者機関による認証を受ける準備を進めている。

差別発言問題と市の対応

2023年6月の市民討論会で起きた差別発言問題を踏まえ、市は2024年5月、事業全体の課題を整理し、再発防止を含む今後の方針をまとめた。柱の一つに据えたのが「当事者との建設的対話」で、障害者団体などの意見を聞く会合を定期的に設けることとした。

2024年11月の会合では、2025年5月に素案を提示し、2026年2月ごろにバリアフリー方針を定めるという日程を示した。担当者は「方針を決める直前に提示しても、建設的な対話をしたことにはならない」と、対話に十分な時間を費やす考えを強調していた。

しかし、市の姿勢が障害者団体の理解を得られたとは言い難い。これまでに3回開かれた会合では、参加者から厳しい意見が次々に上がった。「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」の斎藤県三共同代表は「市はいつも『検討します』で終わる。対話を装っているだけで、内容は何一つ深まっていない」と手厳しい。

今後の見通し

各階の配置場所のシミュレーションや緊急時の避難方法など、検討課題は多く残る。市側は「対話の材料が不十分な中で素案を示すのは適切ではなく、市民の混乱を招く恐れがある」として、先送りを決めた。今後の会合では各課題の検討状況を丁寧に説明していくという。復元事業の進捗はさらに遅れる可能性が高く、今後の動向が注目される。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ