400年を超える歴史を持つ大三島の神楽、若い世代が継承に参加
愛媛県今治市に位置する大三島には、伊勢(現在の三重県)から伝わったとされる400年以上の歴史を誇る「大三島の神楽」が存在します。この神楽は愛媛県指定の無形民俗文化財に指定されており、二つの神楽から構成される貴重な伝統芸能です。しまなみ海道によって愛媛県と広島県の島々が結ばれる中、最も大きな島である大三島では、古くから受け継がれてきた神楽が現代まで守り続けられています。
大見地区で行われる小神楽と途絶えた大神楽
大三島のほぼ中央に位置する大見地区では、毎年旧暦1月12日に近い日曜日に大見八幡太神社で小神楽が舞われます。かつては10年に一度の大神楽も行われていましたが、約60年前から途絶えたままとなっています。今年3月1日には、舞太夫たちが列をなして神社に向かい、露払い役が海水で清めた刀の柄に触れて身を清める儀式から始まりました。
11年に新築された拝殿を舞台に、天狗の面をつけた猿田彦役が刀を手に勇壮に舞う「露祓い」から始まる8つの演目が約2時間にわたって披露されました。太鼓や鉦、笛の音と独特な節回しの歌に合わせて、神職が吉兆を占う「籤舞」、陣羽織姿の舞太夫が弓矢を使い四方を清める「四天」、そしてすべての道具を手に舞う「舞上」まで、多彩な演目が続きます。
消防団から高校生へ、継承の担い手が広がる
27年前からは地元の消防団が参加し、後継者難に直面する神楽の存続を支えてきました。今回の特徴は、県立今治北高大三島分校の生徒たちが道具の制作などの事前準備を手伝ったことです。同分校には橋を渡って通学したり島内で下宿したりする生徒が多く、地域理解の一環として2021年から神楽に関する取り組みが始まりました。
現在、1年生は「総合的な探究の時間」で神楽について学んでいます。神楽に携わる藤原徳昭さん(65)は「子どもたちが興味を持ってくれるのは良いことです。男女の関係なく、舞を覚えた人がいたら神楽をやってもらっていい」と歓迎の意を示しています。
島を離れても忘れない、高校生の貴重な体験
今年は卒業式の日程が重なったため、神楽の本番で生徒の姿は見られませんでしたが、事前準備に参加した2年生の女子生徒(17)は「成長して受け止めがどう変わるか気になるので、また神楽を見に行きたい」と語ります。県外への進学を希望している彼女は「普通の高校生にはできない、貴重な体験をさせてもらった。島を離れても忘れることはないと思う」と話しています。
各地から島に集まり、やがて世界へ巣立っていく高校生たちの心の中では、瀬戸内海の多島美とともに、この地に根付く神楽の伝統が色あせることなく生き続けることでしょう。若い世代の参加が、400年を超える歴史を持つ大三島の神楽の未来を明るく照らしています。



