越前市で「恋のうた」短歌コンテストが開催、若い世代から2万383首の応募が集まる
福井県越前市では、「恋のうた」をテーマにした短歌コンテストが毎年開催されています。第27回を迎えた今年度は、全国および海外から合計2万383首の作品が寄せられ、その中から最優秀賞には広島県在住の20歳男性の作品が選ばれました。SNSなどを通じて短歌がブームとなる中、若手の活躍が際立つ結果となりました。
若い世代の参加が増加、技術向上も顕著に
このコンテストは、万葉の里短歌「あなたを想う恋のうた」として知られています。越前市味真野地区が、万葉集で詠まれた相聞歌の舞台となったことにちなみ、1998年度から始まりました。市民らで構成される実行委員会が主催しており、近年では毎年1万5000から2万首ほどの応募があり、皇居で行われる「歌会始の儀」に匹敵する規模となっています。
「恋のうた」というテーマが多くの人々を引きつけているようです。審査委員長を務める歌人の松平盟子さんは、「万葉集を始め、古今を通じて恋の歌は多いものです。日本人はシャイなように見えて、恋心を歌に託すことに肯定的な傾向があります」と語ります。実行委員会が高校単位での応募を積極的に働きかけていることもあり、若い世代からの作品が多数を占めています。今回は応募者1万2692人のうち、20歳未満が1万884人と、全体の8割以上を占めました。
第4回から関わっている松平さんは、「ネット社会の進展により、気軽に詠んだり発表したりできる環境が整い、若い世代の技術が向上していると感じます」と指摘します。
最優秀賞は広島県の20歳男性、独学で実績を積む
最優秀賞には、広島県呉市の呉高専5年生、池田陽一郎さんの作品「好きという輪郭のない感情をガラスの破片みたいに拾う」が選ばれました。2月に越前市で行われた表彰式では、万葉衣装に身を包んだ県立武生商工高校の生徒たちが入賞作品を朗読し、華やかな雰囲気を演出しました。
審査員を代表して歌人の藪内亮輔さんは、池田さんの作品について、「『好き』という感情をガラスというヒリヒリとした存在と重ねた点が秀逸です。繊細な透明感があり、結句の『拾う』に一歩踏み込む勇気を感じさせます」と講評しました。
池田さんが短歌を始めたきっかけは、学校の図書館で手にした歌人・俵万智さんの「サラダ記念日」などでした。「自分にもできそうだ」と思い、約2年前から新聞などに投稿を開始し、X(旧ツイッター)にも毎日投稿を続けています。短歌の魅力について、池田さんは「31音という制約の中で、パズルを解くように想像力を膨らませて作る面白さがあります」と語ります。
伝統的なスタイルである結社に入り主宰者から教えを受けるのではなく、歌集を読み、SNSも活用するなど独学を貫いています。それでも、全国短歌大会(現代歌人協会主催)で学生短歌賞を受賞するなど、着実に実績を積んできました。池田さんは、「初めて一番上の賞を取れてとても嬉しいです。いずれは歌集も出したいと考えています」と意気込んでいます。
優秀賞作品も多彩な表現が光る
優秀賞には以下の作品が選ばれ、多様な恋心が詠まれました:
- 好きだって気付いてしまって図書館に雪原ほどの静けさが来る – 新堀笙子(神奈川県)
- 君の名を漢字カタカナひらがなで書く並木坂文房具店 – 吉田里香(熊本県)
- あのひとの姿が遠くに見えた時しづかな沼の水が傾く – 山下好美(石川県)
このコンテストは、越前市の文化活動として定着し、若者を中心に短歌の普及と技術向上に貢献しています。今後も多くの参加者が集まり、新たな才能が発掘されることが期待されます。



