木下晴香主演「コーカサスの白墨の輪」、未来戦争後のアップデート版で人間の普遍性を問う
木下晴香主演「コーカサスの白墨の輪」、未来版で人間性を描く

木下晴香が挑むアップデート版「コーカサスの白墨の輪」、未来戦争後の物語で人間の普遍性を問う

木下晴香主演の音楽劇「コーカサスの白墨の輪」が、12日より東京で開幕する。本作は、1940年代にドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが執筆した原作を、演出家の瀬戸山美咲が大胆にアップデートし、遠い未来の戦争後の世界を舞台に構成した。この刷新された名作に挑む木下晴香は、人間の本質について深い洞察を語っている。

未来戦争後の世界で繰り広げられる劇中劇

木下晴香が演じるのは、料理女のグルーシェという役だ。政変後の混乱の中で置き去りにされた太守の子供を引き取り、困難に立ち向かいながら守り通す強い女性を描く。しかし、戦乱が収束すると、生みの親であるナテラ(sara)が子供の返還を求めて裁判を起こすという展開となる。この物語は、育ての親と生みの親が子供を巡って争う「大岡裁き」にも通じる普遍的なテーマを内包している。

木下は作品について、「人間って良くも悪くも変わらないと感じました。80年以上前に書かれた作品なのに、現代にも通じる深いメッセージが詰まっています」と語る。このような問題意識から、瀬戸山は上演台本を執筆。時代設定ははるか遠い未来の戦争後とし、二つのアンドロイド集団による土地所有を巡る論争が描かれる。この争いがグルーシェの物語と類似していることから、劇中劇として上演される仕組みだ。

科学技術が発達した世界での新たな解釈

劇中では科学技術が高度に発達しており、グルーシェは太守の子供の受精卵が入った培養器を抱えて逃亡する場面が登場する。木下はこの役柄について、「私が培養器を充電しないと、この子は生きていけないという感覚になります。稽古場でもできるだけ抱えたり、近くに置いたりしているので、自然と愛情が湧いてきます」と、役作りの過程で生まれた感情を明かす。

瀬戸山との話し合いを通じて、ヒロイン像は「強いだけでなく、弱い部分もある」多面的なキャラクターとして描かれることが決まった。木下は、「子供のためになりふり構わないエネルギーは大事にしつつも、多くの悩みや揺れ動きを表現します。瀬戸山さんは各キャラクターを立体的に描こうとしているので、私にとって大きな挑戦です」と、役への取り組みを熱く語る。

生演奏によるオリジナル劇中曲と豪華な共演陣

本作では、オリジナルの劇中曲が生演奏される点も見どころの一つだ。木下は音楽について、「本当に現代的です。ビートやグルーブの効いた力強い曲から、キャラクターごとのテーマソングのような曲まで、バリエーション豊かな楽曲がそろっています」と評価する。

1999年生まれの木下晴香は、これまで「アナスタシア」や「レ・ミゼラブル」、「ファンレター」など、数々のミュージカル作品で注目を集めてきた。今作では、元宝塚トップスターの一路真輝をはじめ、共演経験のある平間壮一、同世代のsara、加藤梨里香、斎藤瑠希ら、ミュージカル界の実力派が顔を揃える。木下は共演者について、「一路さんがどんと構えてくださっていて心強いです。みんなタイプの違う歌声を持っていて、すてきなハーモニーを生み出しています」と、舞台への期待を膨らませる。

公演は30日まで、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで開催される。問い合わせは電話03・5432・1515まで。このアップデートされた名作は、観客に人間の本質と未来への問いを投げかけることだろう。