ふすま紙の繊細な切り絵が生むユーモア、祝儀袋で伝統革新
和室を象徴するふすまは、暮らしの洋風化で日常から遠ざかりつつあります。そんな中、大阪市城東区の老舗表具店「紙戸屋・中野表具店」が、ふすま紙の魅力を現代に伝えるユニークな祝儀袋「億萬金封」を制作しています。繊細な切り絵を施した紙製品で、笑いを誘う仕上がりが注目を集めています。
中身の紙幣が変装?繊細な切り欠きの妙技
「億萬金封」は、淡い花柄や素朴な縞模様など、ふすま紙らしい上品さを保ちつつ、ところどころに切り欠きを施しています。この切り欠きを通して、中身の紙幣が部分的に見える仕組みです。例えば、1万円札を収めると、肖像画の渋沢栄一がカツラとメガネで変装しているように見え、額面部分は「1000万円札」のように錯覚させるデザインになっています。3代続く表具店の職人技が光る、遊び心あふれる作品です。
ふすま紙の多彩な魅力を商品化
同店で働く中野智佳子さん(57)は、「ふすまが日常生活から縁遠くなる中、ふすま紙で身近な商品を作りたいと考えました」と語ります。もともとデザイナーだった中野さんは、家業を手伝い始めてふすま紙の豊富な種類に気づきました。「柄も模様も多彩で、本物のササの葉をすき込んだものもあります。祝儀袋なら、そんな魅力を手軽に伝えられます」と説明します。
制作工程は、自らパソコンで図案を描き、機械で丈夫なふすま紙を1枚ずつ加工。最後は手作業で仕上げます。すべて自前で行っているのは、印刷会社から「機械の型抜きでは繊細な切り絵を表現できない」と断られたためです。1枚作るのに30分かかることもあり、「売れても大変、売れなくても大変」な商品ですが、通販サイトや百貨店イベントで販売され、今年度は「大阪製ブランド」に選ばれました。
伝統和紙の産地も歓迎、持続への願い
使用されている紙は、金箔紙、銀箔紙、手すき越前和紙の「本鳥の子」、再生紙の「新鳥の子」の4種類です。このうち「本鳥の子」を作る福井県越前市のやなせ和紙の柳瀬晴夫社長(70)は、「産地の願いは、多くの人に和紙に触れてもらい、良さを知ってもらうこと。『億萬金封』はありがたいですよ」と歓迎します。
ふすま紙は多彩さが魅力ですが、中野さんは「注文の際に『廃番になった』と言われることが増えた」と指摘します。だからこそ、ふすまに目を向けるきっかけになることを願い、「億萬金封」を作り続けています。価格は、金箔紙が1万1000円、銀箔紙が8800円、本鳥の子が2750円、新鳥の子が1100円(いずれも税込み)です。



