神戸の畳職人が藍染めの布で新たな畳縁を開発、伝統美の継承へ
神戸市灘区の畳職人が、畳の端を包み込む「畳縁(たたみべり)」に藍染めの布を用いた、新たな畳作りに取り組んでいます。住環境の変化で畳離れが進み、化学染料の台頭で藍農家や染料を作る「藍師」が減少する中、手を取り合って日本の伝統美を守るためのコラボレーションが始まりました。新たなファンの獲得を目指すこのプロジェクトは、伝統工芸の未来を切り開く試みとして注目されています。
消えゆく伝統への危機感から生まれた協力
新たな畳作りに挑んでいるのは、1958年創業の奥井畳店の3代目、奥井啓太さん(33)です。消えゆく伝統の行く末を憂え、できることから行動しようと考えた奥井さんは、住環境の変化に直面しています。住環境研究所(東京)の調査によると、2022年度に着工した2階建て住宅6873軒のうち、和室や畳コーナーがない住宅は49.7%に上っています。さらに、発色が難しく、世界に「ジャパン・ブルー」と称賛される藍染めも化学染料に押され、藍師は年々減少しています。奥井さんは「需要の低下に向き合う伝統同士が交わることで状況を変えたい」と思い、行動を起こしました。
藍の産地・徳島県との連携で事業を始動
奥井さんは藍の最大産地・徳島県に足を運び、藍師の渡辺健太さん(40)と協力しながら、昨年から事業を始動させました。当初は畳表の材料となるイ草を藍色に染めようとしましたが、特殊な機械が必要になることから断念し、藍染めした糸で織った畳縁の開発に行き着きました。岡山県倉敷市の老舗畳縁メーカーに依頼して試作したところ、事業への賛同を得ることができ、量産が可能になりました。畳縁は白、黒、茶色の綿糸いずれかを織り交ぜた3種類で、リラックス効果があるイ草の香りとともに、深く温かみのある藍色を身近に味わうことができます。
天然素材にこだわり、質感と奥深さを追求
現在、畳縁はコストが抑えられ、耐久性にも優れた化学繊維を使うのが主流となっていますが、奥井さんはあえて天然素材の綿糸を用いることにこだわっています。奥井さんは「光の当たり方によって見え方が変わる藍染めの奥深さや上品な質感を感じ取ってもらえるはず」と語ります。この取り組みは、単なる製品開発ではなく、伝統技術の価値を再評価する機会を提供するものです。
クラウドファンディングで資金を募り、市販化を目指す
市販化に向け、クラウドファンディング(CF)の専用サイト「For Good」で3月1日まで資金を募っています。2万4000円の寄付で10畳分の畳縁が贈られる特典などを用意しており、寄付者の近所にある畳店での取り付けを想定しています。奥井さんは「畳と藍染めのそれぞれが持つ機能性や歴史に、多くの人が興味を抱く機会になってほしい」と話しており、このプロジェクトが伝統工芸の新たな可能性を広げることを期待しています。



