高知県立文学館が故・市原麟一郎氏の民話集を発行、182話を地図で紹介
高知県立文学館(高知市)は、県内の民話や戦争体験を紙芝居などで語り継いできた須崎市出身の故・市原麟一郎氏が採集した民話を収録した「土佐民話資料集」を作成しました。この資料集は、県内全34市町村の地域に伝わる計182話を地図に記してわかりやすく仕上げており、学校や地域の郷土学習などへの活用を呼びかけています。
全市町村の民話を網羅した詳細な地図
資料集はA4判、68ページで、表題は市原氏が好んでいた言葉「いち無尽 みんわ 一途(いちず)」を採用しています。目次を見開くと、県内の地図上に民話の題名とともに、河童のような妖怪・芝天狗の異称「シバテン」や滑稽な言動をする「おどけ者」など、特色ある土佐民話のキーワードが落とし込まれ、旧市町村名も表記されています。
別のページではキーワードの意味を紹介し、さらに東の東洋町から西に向けて市町村順に各民話の要約を掲載。市原氏が撮影した写真や図解、地図などのメモを添え、42年間にわたり500号まで発行した「土佐の民話」の代表作も収録しています。
調査研究に役立つ充実した内容
この資料集は、調査や研究に役立つように、著作リストを発行順に並べたほか、総目次を民話集や妖怪・怖い話などに分類し、五十音順にリスト化するなど手の込んだ内容となっています。市原氏は、土佐の民話に笑い話が多いことについて、「土佐人はいったいに深刻ぶるのが苦手で、まじめな話でもおどけて、陽気に語るくせがあるようです」と解説しており、その言葉も記載されています。
市原麟一郎氏の功績と資料集の編集背景
市原氏は2023年9月に101歳で死去。「土佐民話の会」を主宰し、高校教諭をしながら県内の埋もれた民間伝承を発掘し、1000話以上の民話を書き残しました。本紙高知版でも2003年から2015年にかけて、「土佐おもしろ人間図絵」「語りつぐ戦争体験記」など土佐弁を交えながら軟らかいタッチの文章で連載しました。
資料集を編集した県立文学館主任学芸員の岡本美和さん(45)は、10年以上にわたり市原氏の紙芝居などを手伝ってきました。岡本さんは、「人間味のある語り口で多くの人々を引きつけた。現場に足を運んで地元の人に丹念に話を聞き、その土地の情景を見てきたからこそできることで、民話を心から愛しているんだなと感じる」と語っています。
資料集の配布と販売情報
資料集は700冊を作成し、県内の小中高校、大学、図書館などに配布されています。また、1冊500円(税込み)で県立文学館(電話:088-822-0231)で販売しており、広く一般にも入手可能です。この取り組みは、高知の豊かな民話文化を次世代に継承する貴重な一歩として期待されています。