4月のある週末、単身で赴任している飛驒地方の秘湯を訪れた。市街地から車で約30分。民家もまばらになった川のほとりに、その温泉はひっそりとたたずんでいた。
炭酸泉の魅力
この秘湯は炭酸泉で、二酸化炭素濃度が高く、源泉かけ流しであることが評判のようだ。小さな温泉には、屋内に熱い湯、屋外にぬるい湯と冷たい源泉の3種類があり、私はそれらを何度か繰り返して楽しむことにした。
源泉での出会い
源泉に浸かっていると、体格の良い親子が入ってきた。飛驒地方に住む息子を、関西地方から父が訪ねてきた様子だ。「ここ、よく来るん?」と父が尋ねると、「2週間に1回くらいかな」と息子。さらに「今入っている水が源泉やで」と、常連らしく答える。その後も父と息子の会話は続いた。
その時、聞き覚えのある道路の名前が耳に入った。「今日は○○○バイパスを通ってきたん?」と息子。「そう」と父。「そのあとは○○自動車道?」「そうそう、○○から○○までは」。
若き日のプロジェクト
その自動車道は、私が若い頃に仲間とともに心血を注いだプロジェクトだった。まさか、その道路が見知らぬ親子の再会を支え、彼らの大切な日常をつないでいることを、気まぐれに訪れた秘湯の源泉で知らされるとは思わなかった。
どうやらこの秘湯は、疲れた体だけでなく、うつろな心まで癒やしてくれるようだ。さっそく、みんなに教えてやろう。



