絵本「いつでも会える」シリーズ、累計200万部の秘密は「解釈できる余白」にあり
心に響く言葉と温かいイラストで、多くの読者の人生に寄り添ってきた絵本シリーズ「いつでも会える」。作者の菊田まりこさん(55)が手がけるこのシリーズは、5作品で累計200万部を突破する大ヒットを記録している。そのロングセラーの秘密について、菊田さんは「解釈できる余白を大事にすること」と語る。
16年ぶりの新作「わたしのおそろい」が問う「本当の仲間とは」
シリーズの新装版とともに、16年ぶりの新作「わたしのおそろい」が刊行された。今作の主人公はネコの女の子で、おそろいのペンダントをつける仲間たちがいたのに、ひとりぼっちになってしまう物語だ。心に雨が降りそうになったとき、ウサギやネズミたちが現れる展開を通じて、「本当の仲間ってなんだろう」という問いに向き合っている。
菊田さんはこの作品について、「自身が子育ての中で見てきた情景がもとになっています。シリーズの中でも登場する動物が多い回です。主人公に投影されることが多いですが、今自分はどの立場にあるのか、という目線で読んでくれてもうれしい」と説明する。
祖父を亡くした経験が生んだシリーズ1作目
菊田さんは1970年、東京都生まれ。子どものころは「おじいちゃん、おばあちゃん子」だったという。大切な祖父を中学生のときに亡くした経験が、シリーズ1作目「いつでも会える」の基盤となった。この作品は、飼い主を亡くした犬を描いたもので、当時の気持ちを映したものだ。
「死を理解しても受け止めるには時間がかかります。私が生まれて、祖父を亡くし、本となるまで長い時間をかけてできました」と菊田さんは振り返る。この深い個人的な経験が、シリーズ全体に普遍的な情感をもたらしている。
シンプルな絵柄と余白が生む解釈の広がり
シリーズの絵本は、白ともう一色を基調にしたシンプルな絵柄で作られている。菊田さんは「余白を大事にしたい。情報が少ないことで、解釈に広がりが生まれます。物語を自分のことととらえてもらえる」と語る。この余白の哲学が、読者が自身の経験や感情を投影しやすい環境を作り出し、ロングセラーを支えている。
シリーズは海外にも広がっており、菊田さんは「国が違えば育つ背景も容姿もちがう。でも本質的な心や命は同じなのだなと。多くの人に手にとってもらえることはうれしい。それはたぶんご縁だと思うんです」と述べている。新作「わたしのおそろい」は1100円(白泉社)で販売中だ。



