岡本太郎賞に「FUKUSHIMA5000」が選出 震災後の福島を5000枚超のイラストで表現
川崎市岡本太郎美術館などが主催する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」の今年度の最高賞である岡本太郎賞に、兵庫県三木市の高田哲男さん(53)の作品「FUKUSHIMA5000」が選ばれました。この作品は、東日本大震災後の福島県を描いた5000枚を超えるイラストで構成されており、高田さんは「震災を知らない世代に伝わるものがあれば」と願いを込めています。
作品の詳細と受賞の背景
「FUKUSHIMA5000」は、震災後の福島県富岡町などの光景をボールペンで描いたイラストで、3面の壁と中央に置かれたフレコンバッグを埋め尽くしています。汚染土などを詰めた黒いフレコンバッグで覆われた田んぼや、人がいない更地など、復興が進まない現実を克明に捉えています。今回、644点の応募作品の中から頂点に輝き、来場者は5000枚以上描かれた絵に見入っていました。
高田さんの被災経験と創作の原点
高田さんが災害をテーマに描き始めたのは、大学生だった1995年1月に阪神・淡路大震災で被災した経験からです。家族7人で暮らしていた自宅が半壊し、半年間は小さな離れで雑魚寝する生活を送りました。その後、ホームセンターで働きながら、被災者の家の再建に携わる中で復興のスピード感を目の当たりにし、「地元に住み続ける人々の新しいスタートに立ち会えた」と感じたといいます。
2011年の東日本大震災では、ボランティアとして宮城県石巻市に赴き、泥やがれきの掃除などに汗を流しました。2013年まで定期的に通い、被災地が復興していく様子を見て、「街も人も新しいスタートを切っている」と感じ、被災地から距離を置くようになりました。
福島への関心と作品制作の経緯
芸術家になる夢を忘れられず、アルバイトで資金をためて旅をしながら絵を描いていた高田さんは、2018年に「被災地の復興の経過を見てみたい」と東北地方を訪れました。その際、福島県の浜通りに目を向けると、更地や生い茂る草など、人が戻っていない光景に衝撃を受け、「この状態を描かなければ」と決意しました。
「1枚のキャンバスには収めきれない」と考え、少しずつ画用紙に描きためていき、大熊町や双葉町、富岡町を10回ほど訪れて、2025年8月までに5440枚を描き上げました。震災から15年を日数にした5479枚分としなかったのは、「復興が予定通りに終わっていないことを表現したかった」からです。
受賞後の思いと今後の展望
受賞について高田さんは、「見る人に5000以上の視点を与えられたかな」と自負しています。また、「福島や東日本大震災を知らない世代が出てくる。その人たちに、アートとして伝えられる何かがあると信じて、残していきたい」と語り、今後も小さな画用紙に向き合い続けることを誓っています。
展示情報
高田さんの作品は、川崎市岡本太郎美術館で開催中の企画展に展示されています。展示は29日までで、開館時間は午前9時半から午後5時、休館日は月曜日です。観覧料は一般700円などとなっています。



