香川の灸まん美術館が和田邦坊の絵はがき目録を公開、154点の作品を詳細に整理
香川県善通寺市にある灸まん美術館は、画家であり商業デザイナーとしても知られる和田邦坊(1899~1992年)の作品の中から、絵はがきだけを集めた詳細な目録を作成しました。この目録には、栗林公園や金刀比羅宮といった香川の名所を、邦坊らしい大胆な描線と鮮やかな原色で図案化した154点の作品が収録されています。
遺族からの寄贈品を学芸員が徹底調査、未使用作品も多数発見
美術館が2018年にリニューアルオープンしたことを契機に、邦坊の遺族から寄贈された遺品を西谷美紀学芸員が改めて調査しました。その結果、未使用のまま残されていた絵はがきや下絵など計154点を、題材や印刷所などに基づいて整理・分類することに成功しました。ただし、制作年代については不明な点が多いことも明らかになりました。
西谷学芸員は「絵はがきという小さな媒体の中にも、邦坊ならではの世界が広がっています。邦坊らしい色彩感覚で表現された香川の風景を楽しんでほしい」と語っています。
邦坊の独特なデザインセンスが光る多彩な作品群
目録に収められた作品の中には、五色台から瀬戸内海を望む「五色台春雪」のように、海を濃紺に、島や山を赤、黄、深緑といった濃い色で塗り、大粒の白い雪を際立たせた作品があります。また、栗林公園を描いた作品では、池を泳ぐ魚を赤や黒のシルエットで表現するなど、邦坊の独創的なアプローチが随所に見られます。
特に興味深いのは、金刀比羅宮を題材にした5種類の絵で構成された絵はがきのセットです。このセットには、畳紙と呼ばれる包装紙も邦坊自身がデザインしており、「金比羅を描く」「和田邦坊画伯」の文字を線ごとに色を変えることで、参道のにぎわいを巧みに表現しています。
戦時中の慰問用作品からスケッチまで、多様な側面を紹介
太平洋戦争開戦直後の1942年1月に、兵士への慰問目的で依頼されて制作された12枚の絵はがきも目録に含まれています。これらは丸亀城や四国霊場八十六番札所・志度寺、坂出市にあった塩田などを題材としており、邦坊の通常の力強いタッチとは異なり、繊細な描線と淡い色彩が特徴です。異国の地で郷愁を誘うような画風となっており、邦坊の作品の幅広さを示しています。
さらに、邦坊が愛用していたはがきサイズのスケッチブックから取られたスケッチと下絵をまとめた章も設けられています。鉛筆だけでなく、墨と筆で描かれたものもあり、同じ栗林公園の松を描いた作品でも、筆は一気に走らせた勢いがあるのに対し、鉛筆は線を重ねた部分が見られるなど、技法の違いを比較することができます。
商業デザイナーとしての邦坊のアイデアが凝縮
「三味線をひく人物」のスケッチでは、画面からはみ出したバチを持つ右手と棹の先端部分を、奏者の両側に描き加えるというユニークな構図が見られます。また、栗林公園の偃月橋を描いた作品では、池を泳ぐ魚のえら蓋などを詳細に描きながら、絵はがきでは赤と灰色のシルエットで魚を表現するなど、スケッチを基に商業デザイナーとして図案化する際のアイデアのプロセスを窺い知ることができます。
西谷学芸員は「五人百姓を描いた作品では、参道に設置される名物の白い傘をあえて赤く塗っています。邦坊ならではのデザインへのこだわりが感じられます」と指摘しています。
この目録の問い合わせは、灸まん美術館(0877・75・3000)までとなっています。



