木村武山の生誕150年記念展、祈りの空間を構成する仏画と花鳥画の融合
茨城県天心記念五浦美術館では、木村武山(1876~1942年)の生誕150年を記念した展覧会を19日まで開催しています。本展では、武山が得意とした説話・物語、花鳥風月、仏画の三つのテーマに分けて作品を紹介し、その芸術的功績を多角的に検証しています。
建築物における障壁画と空間構成力
武山は大正から昭和にかけて、花鳥画や仏画を展覧会に出品する一方で、寺院や個人宅の障壁画制作にも精力的に取り組みました。これらの障壁画では、各画面の内容が相互に呼応し、建物全体の空間を構築する力が発揮されています。武山の作品には、優れた空間構成力が顕著に見られ、特に母の供養のために笠間市の自宅敷地内に建立した大日堂の内部空間は、その力量をよく表しています。
大日堂の天井画と仏の世界への導き
武山は大日堂の壁画・天井画に自らの手で花鳥画と仏画を描きました。天井画の中央にはタカとツバメの図が描かれており、鳥を下方から見上げる視点で捉えられています。これにより、鑑賞者は頭上を実際に鳥が飛んでいるかのような感覚を覚え、日常的な自然の姿が仏の荘厳な世界と緩やかにつながります。一般に天井画の鳥は静止した姿で描かれることが多いですが、大日堂では動きを伴った表現が特徴で、訪れた人を自然と仏の世界へ導く役割を果たしています。
密教の曼荼羅空間としての構成
堂内正面の壁画には大日如来と日光・月光菩薩、右壁面には虚空蔵菩薩、左壁面には弘法大師が描かれています。さらに、天井画の四隅には密教の金剛界曼荼羅に登場する外四供養菩薩が配され、武山は堂内の随所に密教の諸仏を配置することで、大日堂全体を一つの曼荼羅空間として構成しました。このように、仏画と花鳥画が融合した空間は、武山ならではの祈りの世界を形成しています。
過去の名品から学ぶ姿勢
大日堂には本尊である大日如来坐像が安置されており、武山は像を納める厨子とその下の須弥壇も自らの手で描きました。厨子正面の扉には白菊とチョウが描かれ、側面と内部には東京美術学校所蔵の「浄瑠璃寺吉祥天厨子絵」や「阿弥陀来迎図」を忠実に模した仏画が施されています。また、須弥壇の側面には中尊寺経蔵の螺鈿八角須弥壇に倣った迦陵頻伽や三鈷杵、宝珠鈴の模様が描かれており、過去の名品から学ぼうとする武山の姿勢が窺えます。
展覧会での再現展示
本展では、笠間大日堂に安置されている厨子および大日如来坐像(笠間市教育委員会所蔵)を展示するとともに、堂内の壁画の一部や天井画、須弥壇を再現しています。これにより、武山が創造した祈りの空間を体感できる機会を提供しています。県天心記念五浦美術館の学芸員・木澤沙羅氏は、武山の独特な空間構成力を感じていただければ幸いだと述べています。



