130キロの右腕が守備の要へ 中京大中京・森風馬の挑戦
聖地・甲子園で、努力の証しを刻んだ選手がいる。中京大中京高校の二塁手、森風馬選手(3年)だ。昨秋の公式戦に続き、選抜高校野球大会でも4試合を無失策で守り切り、ピンチの場面で確実な打球処理を見せてチームを支えた。その背景には、投手から野手への転向という大きな決断と、誰にも負けない練習量があった。
肩の痛みと向き合い、野手転向を決意
入学当初は投手として期待された森選手。中学時代には130キロ前後の直球を投げる右腕だったが、1年夏から右肩の痛みに悩まされるようになる。球速は120キロ台前半まで落ち込み、投手として続けられるか深く悩んだ時期もあった。そんな中、高橋源一郎監督から野手転向の提案を受け、1年冬から遊撃手として新たな道を歩み始めた。
経験の差は、圧倒的な練習量で埋めていった。チームメートから「チーム一番の努力家」と称される森選手は、三重県四日市市の自宅を午前5時に出発し、電車で約1時間半かけて通学。大半の部員よりも長い通学時間にもかかわらず、チームで一二を争う早さで朝練に参加し続けた。「守備でチームに貢献したい」という思いから、野手転向後は毎日40分ほどノックを受け、基礎技術を磨き上げた。
元中日・荒木雅博氏からの教え
新チームになってからは二塁手に転向。同じポジションの名手として知られ、昨年末まで中京大中京の臨時コーチを務めた元中日ドラゴンズの荒木雅博氏から直接指導を受ける機会にも恵まれた。森選手が特に印象的だったというのは、荒木氏の基礎を大切にする姿勢だ。「取り方よりもバウンドを合わせることが一番大事」という助言を胸に、地道な基礎練習を繰り返した。
その成果は甲子園の舞台でも発揮された。智弁学園戦では、2回裏に北川選手の二ゴロを確実に処理するなど、堅実な守備でチームのピンチを救った。しかし、八回には悔いも残した。二遊間への打球を飛びついて好捕したものの、送球がそれて内野安打を許し、結果的にその走者が決勝点となる適時打で生還してしまったのだ。
守備力のさらなる向上へ
守りから攻撃につなげるチーム方針を持つ中京大中京にとって、守備力の強化は欠かせない要素だ。森選手自身も「球際の強さや送球の精度をもっと上げないといけない」と課題を認識している。誰にも負けない「継続する力」で、尊敬する荒木雅博氏のように自分の武器を磨き上げ、さらなる成長を目指す。
130キロの右腕から堅守の二塁手へ。森風馬選手の変身は、逆境を乗り越える努力の大切さを改めて示す物語となった。甲子園で刻まれた4試合無失策の記録は、その努力が実を結んだ証しである。



