愛知・名古屋アジア大会まで200日、円弧デザインに込めた架け橋の思い
愛知・名古屋アジア大会の開幕まで、3日で200日となる。開催地では大会をPRするのぼりやポスターが増え始め、1994年の広島大会以来32年ぶりの国内開催に向けて着々と準備が進んでいる。競技を示す絵文字「ピクトグラム」は日本で確立したとされ、五輪やパラリンピックなどスポーツの国際総合大会では趣向を凝らしたデザインで選手や観客の目を楽しませてきた。今回のアジア・アジアパラ大会でも独自のこだわりが詰まっている。
躍動感と分かりやすさを両立した円弧デザイン
アジア・アジアパラ大会(愛知・名古屋大会)のピクトグラムは、全てに円弧が使われているのが最大の特徴だ。大会組織委員会はこの円弧を、栄光や未来への架け橋を意味する「グローリーブリッジ」と呼ぶ。大会エンブレムに用いられており、コンセプトを統一させた。
「円弧を生かした躍動感と、いかに見やすくするかを意識した」。ブランディングやデザインのトップを務める大会組織委の中森康弘副事務局長は説明する。野球はバットのスイングの軌道のように使い、スポーツクライミングは壁を登っている様子を表現するなど、競技ごとに創意工夫した。
デザインは組織委で作成。プロジェクトは一昨年の夏からスタートし、昨年秋の公表まで1年以上かけた。大会エンブレムを手がけた宮下浩さん、2021年東京五輪のピクトグラムをデザインした廣村正彰さんがアドバイザーを務めた。組織委内のデザインチームが原案を作り、アドバイザーや競技担当の職員の意見も取り入れた。
各競技団体にも意見を聞いて、競技者からの視点も大切にして案を固めていった。中森さんは「限られたスペースの中でも力強さを出そうと、手脚の角度や配置など、かなり細かい点も相談しながら進めていった」と振り返る。
自転車はロードレースやトラックなど5種目に分かれる。それぞれの違いを出すために、ハンドルの形や車体の傾斜などを変えて表現。柔道はともえ投げされる側の倒れる方向を円弧で示し、寝技が中心の柔術は技を仕掛けているシルエットで違いを出した。
デザイン性と機能性を追求する国際大会の潮流
競技のピクトグラムがスポーツの国際総合大会で使われたのは、1964年東京五輪が初めて。分かりやすさが好評を博し、世界に広まった。2021年東京五輪は64年大会のデザインをモチーフに制作。開会式では、ピクトグラムをパントマイムで次々とユーモアに模したパフォーマンスが話題となった。
ピクトグラムは言語や文化の違いを超え、どの競技かを一目で伝える役割が求められる。加えて、装飾として大会を盛り上げる要素もあり、開催地によって特色が出る。大会組織委によると、アジア大会では2006年ドーハ大会から使われ始めたという。
24年パリ五輪はフランスらしさを感じさせる「紋章」と「石畳」をイメージしたシンメトリー(対称)なデザイン。競技者を模したシルエットではなく、独創性を打ち出した。23年杭州アジア大会は、開催地の名所でもある大河の潮流がモチーフで、アスリートの動きを重ねて表現した。
中森さんは「過去の国際大会を見ていると、シンプルで分かりやすいものと、デザインに特化したものに二分される」と分析する。今大会は分かりやすさを意識したデザイン。エンブレムとスローガンが出来上がってから制作したため、統一感のあるものに仕上がったという。
エンブレムに込められた今と未来を結ぶ円弧
愛知・名古屋大会のエンブレムは愛知県岡崎市出身のグラフィックデザイナー宮下浩さん(元愛知産業大准教授)が手がけた。アジア大会は、スポーツの躍動感を表現した曲線で形作った三つの円弧を、県の花「カキツバタ」の紫色、名古屋城のしゃちほこの金色、環境への思いを示す緑色で彩らせた。パラ大会では、アスリートの燃え盛る熱い心を赤色や黄色の円弧で表現した。
組織委はエンブレムの円弧を架け橋に例え、愛知・名古屋と世界、競技の今と未来を結ぶ象徴として、ピクトグラムなど大会関連のデザインに取り入れている。
街を装飾し高まる祝祭ムード
大会に向け、愛知の街に大会ロゴやマスコットが登場し始めている。大会組織委が展開する「シティードレッシング」事業で、アジア・アジアパラ大会のロゴなどで街を装飾。名古屋駅や空の玄関口となる中部国際空港を飾り、祝祭ムードを盛り上げている。
空港の到着フロアにお目見えしたのは子どもサイズの表彰台。アクセスプラザにはカウントダウンボードが置かれ、大会への機運を高めている。名駅で発着する新幹線の車内には公式マスコットのホノホンとウズミンのステッカーが貼られた。
3月からは空港のタクシーやバスの到着エリアの柱などに装飾が施され、今後は名古屋市内や競技会場のある自治体の公共施設にものぼり旗などが掲げられていく。大会が近づくにつれ街がドレスアップされていく予定で、組織委の担当者は「わくわくを感じてもらえたら」と話す。
日本代表選考が本格化
9月19日に開幕する愛知・名古屋アジア大会は今月から、各競技で日本代表選考が本格化する。
- 陸上の女子マラソンは8日の名古屋ウィメンズが、競歩は15日の全日本能美大会がそれぞれ最終選考会となる。
- トラック、フィールド種目は、アジア大会のメイン会場となるパロマ瑞穂スタジアム(名古屋市)で6月に開催される日本選手権が選考会となる。
- 競泳は19~22日の日本選手権で決まる。これもアジア大会で会場となる東京アクアティクスセンターが舞台。
- レスリングは5月に明治杯全日本選抜選手権が東京で行われ、昨年末の全日本選手権の優勝者が続けて制すれば代表に決定。
- 体操は個人総合で競う5月のNHK杯(東京)の上位3人に加え、チーム貢献が見込まれる2人を選ぶ。
- 前回大会から実施のeスポーツは今月21、22日の「ASIA esports EXPO 2026」(愛知県常滑市、愛知県国際展示場)で6タイトルの代表候補を決める。
- 卓球は団体戦の代表を男女5人ずつ選び、その中から個人戦の出場者を決める。既に全日本選手権など国内大会で男女2人ずつが内定。
- 10月18日開幕のアジアパラ大会に向けては、水泳は5月の「ワールドシリーズ富士・静岡」(静岡県富士水泳場)で派遣基準記録を突破した選手から選ぶなど、これから動きが活発になる。
チケット販売の詳細
観戦チケットは2月から、開催地域の住民を対象に第1次先行販売が始まった。地域を限定しない第2次先行販売は今月12日午後5時~31日午後11時59分。ともに先着順で、購入には「応援ID」の登録が必要。登録方法やチケットの詳細は、アジア大会とパラ大会の各公式サイトから確認できる。一般販売は6月に開始する予定。
第1次先行販売の対象は愛知、岐阜、三重、静岡、東京、大阪の6都府県。チケットの種類は誰でも購入できる「一般」、15歳未満の「子供料金」、障害者手帳所有者向けの「障害者料金」、同伴者1人が無料となる「車いす」などがある。



