長野県売木村で半世紀以上にわたり親しまれてきた「うるぎ自然休養村渓流釣り祭り」が、5月31日と6月1日の開催を最後に、53年の歴史に終止符を打つこととなった。村によると、参加者数の減少が主な理由だ。また、このイベントに魚を提供してきた村唯一の養魚場も、今回をもって閉業する。
ピーク時から半減、参加者減少が決定打
この祭りは、農繁期を終えた村民が集まり、川に魚を放流して釣り大会を開いたことが始まり。1979年から「渓流釣り祭り」の名称で続き、1990年ごろには約300人が参加していたが、一昨年は154人と半減した。飯田市内の釣具店関係者は「飯田下伊那地域で一番にぎわう釣り祭りだった。悲しいが、時代の背景を考えるとやむを得ない」と語る。
かつての人気ぶりを懐かしむ声
30年ほど前、村職員として受付係を担当した松村和芳教育長(65)は、当時の人気ぶりを懐かしむ。「午前4時には行列ができていた。寒かったが、たくさんの人が集まったおかげでその場の気温が高くなり、参加者が川へ散ると一気に寒くなった」と振り返る。
若者の釣り離れとスタイルの変化
近年は村内の参加者は少なく、中京圏など村外からの参加者がほとんどだ。飯田市の釣具店「フィッシングサルーンふるきん」の横田浩二店長は、昔に比べるとゲームなどの娯楽が多く、釣りに興味を持つ若者が減っていると指摘。さらに、釣りをする若者でも「昔のように魚を食べるために釣るのではなく、釣りそのものを楽しむ人が増えた」といい、本物の虫を使う餌釣りより、疑似餌を使うルアー釣りが人気という。
村唯一の養魚場も閉業へ
村にある丸屋養魚場は、数年前まで近隣市町で開かれる釣り祭りでの放流や村内の宿泊施設で使う6万匹のアマゴを育てていたが、取引先が徐々に減り、現在は渓流釣り祭りのために3千匹を育てるだけとなった。養魚場を経営する後藤文登さん(67)は、魚に与える餌の高騰や自分の体力面を考慮し、今回のイベントを最後に養魚場を閉業することを決めた。「寂しいが、しょうがない」と複雑な心境を吐露した。
最後の祭り、多彩な企画で集客
今年の渓流釣り祭りは、景品を用意したり、周辺でマルシェを開いたりする。会場は村中心部の軒川橋から潮淵橋までの約1キロの区間。事前にニジマス150キロとアマゴ200キロを放流する。毛針のアクセサリーや米、村内の温泉施設の割引券などがもらえる抽選を用意したり、村民の参加費を無料にしたりする。アマゴの炭火焼きなども販売する。
受け付け開始は両日とも午前6時。釣り具や餌を持参する必要があり、村外在住の参加費は4千円(小中学生は千円)。村担当者は「きれいな自然や渓流は売木村ならではなので、楽しんでほしい」と呼びかける。問い合わせは実行委=0260(28)2311。



