福島県立博物館(会津若松市)で7月11日に開幕する「大恐竜展 新発見の堅頭竜類ザヴァケファレ」では、世界初公開となる新種の頭突き恐竜ザヴァケファレ・リンポチェの化石が展示される。同館の吉田純輝学芸員は「多くの皆さんに研究の成果を見ていただきたい」と意気込みを語る。また、北海道大学総合博物館の小林快次教授は「だれも見たことがないものを真っ先に見ることができる」と展覧会の価値を強調する。
研究者の原点
大恐竜展は夏休み期間中に開催される。子どもたちも多く訪れることが予想されるため、二人が恐竜に興味を持ったきっかけについて尋ねた。
小林教授:「私は福井県の出身で、興味を持つ前に恐竜に絡んでしまった感じです。本格的に恐竜に興味を持ったのは、大学生で米国に留学してからです。」
吉田学芸員:「親から聞いた話では、2歳くらいで恐竜に興味を持ち始めたそうです。図鑑に夢中になり、博物館に通ううちにさらに興味が深まりました。恐竜に関わる仕事をしたいと思うようになり、小林先生のもとで学び、現在は県立博物館で働いています。」
小林教授のもとで学ぶきっかけ
吉田学芸員:「子どもの頃から国立科学博物館に通い、古生物学者の真鍋真先生(現館長)と面識がありました。進路について相談した際、『小林先生のところで学んだらどうか』と勧められ、北海道大学に進学しました。理学部1年生の時から、勝手に先生のゼミに参加して勉強させてもらいました。毎回のように質問をし、先輩たちにも積極的に質問しました。非常に刺激的で楽しかったです。」
小林教授との印象的なやりとり
吉田学芸員:「10年ほど指導いただいたので、さまざまな思い出があります。怒られたこともありますが、節目ごとに助言をいただきました。ニューヨークのアメリカ自然史博物館に研究留学した際には、キャリアや研究スタイル、米国の研究者事情などについて教えていただきました。」
小林教授から見た吉田学芸員の成長
小林教授:「彼はセンスの塊です。恐竜ののどの研究もそうですし、研究スタイルや切り口が非常に斬新で、面白いことをしています。努力家で、最初は粗削りで何でもやりたいという貪欲さがあり、ハラハラすることもありましたが、今は頭角を現し、素晴らしい研究者になりました。他の研究者から見ても、面白い視点で研究しています。」
発掘の面白さ、想定外にわくわくする
研究で大切にしていること
小林教授:「私は研究テーマをあまり決めていません。私たちの研究や発掘は『これを見つけたい』と思って見つけるものではありません。ザヴァケファレも、あの化石を探しに行ったわけではなく、偶然見つかり、そこから新しいテーマが発展しました。私は現場主義なので、現場や発掘を楽しむことが一番です。化石が見つからない年も面白さがあり、それに気づける人が研究者に向いていると思います。吉田さんも、化石が見つからなくても楽しんで発掘しています。」
吉田学芸員:「恐竜研究が始まって200年ほどたち、さまざまな化石が研究に使えるようになりました。全身骨格や群れの化石の発見により、断片的だったことが解明されてきています。恐竜から鳥類への進化のパターンが見えるのが面白いです。一方で、一つの化石によってそれまでのシナリオが覆されることもあります。それは残念ではなく、むしろわくわくします。新しい法則性が見えてくる面白さがあります。」
発掘現場でしか味わえない素晴らしさ
小林教授:「アラスカや砂漠での発掘現場に行くことで、新たな発想が生まれます。厳しい自然を体感しながら、恐竜の生活について考えが膨らみます。机に向かうよりも、野外で自然を感じることで、恐竜の生態についての想像が広がります。研究者との対話も重要です。インスピレーションを得るには、外に出て物に触れることが大切です。」
吉田学芸員:「ゴビ砂漠でラクダの足跡を見て、恐竜の足跡を想像することもあります。日本が大陸の一部だった頃や恐竜がいた時代を想像し、現在の動物の痕跡と比較することでひらめきを得ます。」
インパクト大きい展示、企画展の意義
展覧会の見どころ
小林教授:「博物館の研究者の世界的な研究成果をその博物館で展示し、地元からスタートさせるという試みは聞いたことがありません。今回の大恐竜展はおそらく初めてでしょう。福島県民にとっては、誰も見たことがないものを真っ先に見られる貴重な機会です。子どもから恐竜に興味がある人まで、非常にインパクトが大きいと思います。」
吉田学芸員:「満を持しての企画展ですので、子どもに限らず、県内外から多くの方に来ていただきたいです。」
吉田学芸員が大切にしたこと
吉田学芸員:「一つ目は、私の研究成果が展示の核ですが、先人の研究者たちの積み重ねがあってこそであることを来場者に知っていただきたいことです。二つ目は、この展示は一人で行っているのではなく、国内の他の博物館やモンゴルの研究所、アメリカ自然史博物館など、多くの協力があって実現していることです。心強く、『皆さんと一緒にやればできる』という気持ちで取り組んでいます。良い展示になると思います。」
小林教授:「展示にはストーリー性が重要です。有名な恐竜を集めるだけではなく、来場者が展示の意味や内容を理解できることが大切です。今回は世界初公開の展示があり、その点はクリアしています。挑戦的ですが、良いテーマだと思います。」
福島県の恐竜研究の今後
小林教授:「以前から福島に興味はありましたが、『誰かが研究しているだろう』と思い込んでいました。実際には、化石は出ているのに研究者や研究チームが入っていないことがわかりました。もし知っていたら、発掘に来ていたでしょう。」
吉田学芸員:「県立博物館で働くことを報告した際、県内の恐竜研究の現状を紹介したところ、小林先生が『日本のラストフロンティアは北海道だと思っていたが、もしかして…』と言われました。」
小林教授:「吉田さんはこれから福島県の恐竜研究を担っていくでしょう。県内で出ている化石や今後出てくる化石は可能性に満ちており、楽しみです。」
福島県の恐竜資源
福島県は浜通りで恐竜などの化石が発見され、化石を見たり発掘体験ができる施設も複数あり、恐竜資源に恵まれている。
小林教授:「各施設が有名なので、連携をさらに深めると良いでしょう。県内だけでなく、宮城や山形など近隣県を含めた広域のつながりをつくり、福島が中核となるのも面白いと思います。」



