尾道市がNPO法人と災害協定を締結、避難所のプライバシー確保へ新たな一歩
大規模災害発生時に、避難所で生活する市民のプライバシー確保を目指し、尾道市は建築を通じた国内外の災害支援活動を行うNPO法人「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク」(VAN、東京都)と、簡易間仕切りなどの提供を受ける災害協定を結びました。この協定は、避難者の安否確認を円滑に行うため、昼間は間仕切りを開けるようにするなど、実用的な使い方を前提としています。
建築家坂茂氏が主導するVANの活動と協定の背景
VANは、「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞を受賞した建築家の坂茂氏(68歳)が代表理事を務め、1995年の阪神大震災をきっかけに発足した組織です。同団体は、紙の筒と布を使用した軽量な間仕切りを考案し、国内外の被災地に提供する活動を続けてきました。昨秋、尾道市などで開催された国際建築祭で坂氏が出展・講演したことを契機に、この協定が実現しました。
坂氏は、「災害時には車中泊によるエコノミークラス症候群で命を落とす人も少なくありません。プライバシーの確保は人権上非常に重要であり、事前の備えが不可欠です」と述べ、市に協定を申し出ました。VANと自治体との災害協定は全国で71番目、広島県内では広島市に次ぐ2例目となります。
簡易間仕切りの特徴と過去の実績
この簡易間仕切りは、1区画が2メートル四方で、紙の筒を骨組みに布を巡らせて目隠しするシンプルな構造です。筒をつなぐことで区画を自由に拡大でき、内部には段ボール製ベッドを設置することも可能です。VANのスタッフが避難所での設置や通路確保を支援し、2018年の西日本豪雨では広島県内の避難所で使用され、2024年の能登半島地震では約1000区画が設けられました。
協定締結式での関係者のコメント
尾道市役所で2月末に行われた協定締結式では、平谷祐宏市長と坂氏が協定書に署名しました。坂氏は、「現場の声を反映させ、改善を重ねてきたこの間仕切りは、柔軟性が高く軽量で組み立てが簡単です。また、飛沫対策にも有効であり、何度も再利用できるため、平時のイベントや防災訓練でも活用していただければ」と語りました。この取り組みは、災害時の人道的支援と地域防災力の向上に貢献することが期待されています。



