埼玉県が廃止を検討している障害者向け宿泊休養施設「伊豆潮風館(ちょうふうかん)」(静岡県伊東市)を巡り、県が関係者から意見を聞く公聴会が26日、さいたま市浦和区の県障害者交流センターで開かれました。参加者からは「他に代替できる施設はない」「世界に誇れる施設。知事も泊まってほしい」などと存続を求める意見が相次ぎました。
伊豆潮風館とは
伊豆潮風館は、県が1988年に障害者とその家族の健康増進やレクリエーションを目的に開設した保養施設です。客室や会議室、天然温泉、レストランを備え、障害者トイレやリフト付き家族風呂などのバリアフリー設備が充実しています。障害者と介護者は安価で宿泊でき、障害がない人や県外の人も利用できます。指定管理者制で民間企業が運営しています。
廃止検討の経緯
伊豆潮風館を巡っては、2024年度に有識者らでつくる「施策評価有識者会議」「公の施設の在り方有識者会議」が廃止を提言しました。これを受け、県は27年度までに「廃止を含めてあり方を検討する」との方針を示し、障害者団体などから反発の声が上がっています。
公聴会での意見
公聴会には障害の当事者や団体関係者ら約40人が参加しました。それぞれの特性や利用経験を踏まえ、さまざまな障害種別や人数に対応できる潮風館の貴重さを訴えました。
人工肛門や人工ぼうこうを利用する団体の代表は「お風呂に入れない人が、堂々と大きなお風呂に入れる。ありがたい施設で、続けてほしい」と存続を求めました。福祉施設の関係者は「バスで直接移動でき、助かる。利用できる範囲内の料金の民間施設はなかなかなく、廃止されたら旅行に行くのは難しくなる」と実情を語りました。
有識者の提言では、民間の宿泊施設でバリアフリー化が進んでいることが廃止の要因に挙げられました。しかし、参加者からは「ビュッフェの利用を断られた」「風呂に手すりがなく、入れなかった」などと、バリアフリー対応をうたう施設でも実際には利用が難しいことがあると訴える声が上がりました。
存続に向けた提案
県障害者協議会の代表理事、田中一さんは利用料の値上げなど「存続できる工夫を考える必要がある」と指摘しました。県が潮風館を維持できなくなった場合、民間に売却する案については「障害のある人に、その企業がどう対応してくれるか。検討会議などを設け、しっかりと議論してほしい」と要望。終了後の取材に「私たちを抜きに、私たちのことを決めないでほしい」と思いを話しました。
県の説明
県側は、障害者福祉推進課の担当者がこれまでの経緯を説明しました。1日あたりの利用者数はあまり変化がない一方、人件費や物価の高騰などで県が払う指定管理料が年々増え、本年度は2億1100万円に上っているとしました。公聴会で上がった意見は今後、検討の参考にするということです。
今後の公聴会
公聴会は障害者とその家族、介助者らが対象で、29日午後2時からも同じ会場で開かれます。申し込みは不要で、オンライン傍聴も可能です。



