「原発脳」からの脱却が求められる節目の年
2026年は、日本の原子力発電政策にとって重大な節目の年となっている。世界最悪レベルの東京電力福島第一原発事故から15年という歳月が経過した今、原発を巡る議論は新たな局面を迎えている。その中で、原発に依存する思考様式「原発脳」からの脱却を求める声が専門家から上がっている。
相次ぐ不祥事と風化する教訓
今年、東京電力は新潟県の柏崎刈羽原発を再稼働させた。一方で、中部電力浜岡原発では新年早々、耐震設計の基準となる地震動データの捏造が発覚した。この問題は、基準地震動を意図的に小さく見せかけ、耐震工事の費用を抑えて早期再稼働を図ろうとした思惑が透けて見える。
福島原発事故の一因は、巨大津波の来襲を示唆する計算結果があったにもかかわらず、東京電力の経営陣が非現実的として対策費用を渋り、必要な安全対策を怠ったことにあった。中部電力の不祥事は、こうした原発事故の教訓が風化しつつあることを示唆している。
被災地の現実と政策の乖離
福島の被災地では、放射性物質による汚染が未だ解消されておらず、避難者は少なくとも2万人を超えている。本紙では2月から、被災者らの思いを伝える連載「原発事故15年 今思うこと」を開始した。連載に登場する多くの人々が原発に対して疑問を抱いているが、そうした声を置き去りに、政府は原発の最大限活用へと舵を切っている。
高市早苗首相は施政方針演説で「再稼働加速に向け、官民挙げて取り組む。次世代革新炉の開発・設置も具体化する」と宣言。衆院選で躍進した「チームみらい」の安野貴博党首も「AIは大量の電力を消費する。大きなベース電源を提供する原発の再稼働はやるほかない」と主張している。
「原発脳」の支配と三段論法の危うさ
AI需要増加→電力需要増加→原発必要という三段論法に陥り、国全体の議論が深まらないことを指摘するのが、原発政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長だ。橘川学長は「電力不足に対し、まずは再生可能エネルギーを議論すべきだが、原発しか思い浮かばない『原発脳』が支配している」と警鐘を鳴らす。
実際、電力供給面では、東京電力や中部電力の管内では原発事故後の10年以上にわたり、「原発ゼロ」の状態で電力需要を乗り切ってきた。東京電力管内では再生可能エネルギーが急成長し、2025年夏の全国最大需要時には太陽光発電だけで原発10基分に相当する電力を供給した。中部電力管内でも太陽光発電は原発5基分に達し、供給力の2割以上を占めている。
再生可能エネルギーの可能性と課題解決
地球温暖化対策として脱炭素電源を求めるなら、原発ではなく再生可能エネルギーの普及を推進すべきだ。原発推進派は「再生可能エネルギーは不安定だ」と批判するが、蓄電所の整備を進めれば、この問題は解消できる。
電気料金の高騰についても、火力発電で使用する化石燃料の輸入に影響を与える極端な円安が主要因の一つと言える。電気代を低減するためには、円安の是正が最も効果的な対策となる。
むしろ、原発のような大規模出力の電源に過度に依存していると、地震や津波による緊急停止時に代替電源が見つからず、大規模停電に陥る危険性も指摘されている。
AIからの回答が示す未来像
大量の電力を消費するとされるAI「Gemini」に「日本から原発をなくすには」と質問したところ、回答として挙げられたのは「『再生可能エネルギー+蓄電池』への大規模な投資」だった。この回答は、技術の進歩が原発依存からの脱却を可能にすることを示唆している。
3月11日が近づくこの時期、卒業式のシーズンでもある。福島原発事故から15年を経て、私たちは「原発脳」の支配からの卒業を真剣に考える時が来ている。再生可能エネルギーの更なる普及と蓄電技術の進展が、持続可能な電力供給の未来を切り開く鍵となるだろう。



