南海トラフ巨大地震の被害想定見直し 愛媛県が最新推計を公表
愛媛県は2月16日、南海トラフ巨大地震の被害想定を約10年ぶりに見直し、最新の推計結果を公表しました。県内の死者数は1万2750人、建物の全壊・焼失は12万6325棟とされ、前回の想定から死者数は2割、棟数は5割減少しています。
データ精度向上と対策進展が被害軽減の要因
今回の見直しでは、2012・13年度の前回想定調査から約10年が経過したことを受け、2024年9月以降、専門家による検討委員会で詳細な検討が実施されました。2025年3月に国から示された最新の推計手法を踏まえ、同年9月の中間報告では、最大震度は7市で震度7、13市町で震度6強を見込み、津波は伊方町で最高19.4メートルと想定されています。
前回想定では死者1万6032人、建物全壊・焼失24万3628棟とされていましたが、今回の被害減少の理由として、データ収集のボーリング地点を増やして精度が高まり、震度6強以上の範囲が縮小したこと、さらに建物の耐震化が進展したことが挙げられています。
市町別の被害状況と内訳
死者数は「冬の深夜」の発生を想定した場合が最も多く、市町別では震度7の範囲が広い西条市が3214人で最多となりました。以下、新居浜市2008人、宇和島市1705人、松山市996人、愛南町846人、今治市671人、西予市639人と続いています。
主な被害の内訳では、津波による死者が9313人で突出しており、30センチ以上の浸水が短時間で広がる西条市、宇和島市、新居浜市で特に目立っています。建物倒壊による死者は3236人で、全壊の多さに伴い西条市、新居浜市、四国中央市で相次ぐと見込まれています。土砂災害は124人、火災は77人と推計されました。
また、災害関連死を初めて試算し、最大3602人と見積もられています。
建物被害と孤立集落の増加
建物の全壊・焼失は、西条市2万3647棟、宇和島市1万7684棟、新居浜市1万7137棟となり、被害の大きな地域は死者数と同じ傾向を示しています。
被害の内訳では、揺れによるものが5万3864棟、津波によるものが4万7909棟、液状化によるものが1万6812棟などとされました。液状化は沈下量が大きい今治市、新居浜市、松山市で被害が想定されています。
孤立する恐れのある集落は、調査対象を拡大した結果、前回想定の253か所から420か所へと大幅に増加しました。
防災対策の徹底と今後の取り組み
愛媛県は、想定される被害を抑えるため、地震対策の徹底を県民に強く促しています。県によると、建物の耐震化率は2023年時点で86.4%となっており、今後100%になれば、揺れによる全壊棟数を約8分の1、建物倒壊と火災による死者数を約12分の1に軽減できるとしています。
津波対策については、2025年の県民調査で直後避難率は45.6%にとどまっており、これが100%になると津波の死者は約4分の1にまで減らせると推計されています。
中村時広知事は記者会見で、「地域のリスクを知ったうえで、正しく恐れ、地震への備えを進めてほしい」と呼びかけました。さらに、「市町や関係機関とも緊密に連携して、スピード感を持って必要な対策を講じていく」と語り、今後この想定に基づいて県の防災計画を見直す方針を示しました。
県民一人ひとりが最新の被害想定を理解し、適切な防災対策を講じることが、南海トラフ巨大地震に備える上で極めて重要となっています。



