茨城県が外国人不法就労通報で報奨金制度を創設へ 2026年度導入
茨城県は、外国人の不法就労に関する情報提供を促進するため、新年度から通報者に報奨金を支払う「通報報奨金制度」を創設する方針を明らかにした。この制度は、寄せられた情報を基に県が調査を行い、不法就労が疑われる場合に県警に連絡し、摘発につながった通報者に数万円程度の報奨金を支給する仕組みだ。県によると、都道府県レベルでの同様の制度はあまり例がなく、農業分野を中心に不法就労外国人が多い茨城県の実情を背景に、抜本的な対策として導入される。
不法就労者数が3年連続で全国最多 背景に農業依存
出入国在留管理庁(入管庁)のデータによると、2024年に不法就労と認定された外国人は全国で1万4千人以上に上り、そのうち茨城県で働いていたのは3452人で、都道府県別では3年連続で最多を記録している。茨城県はこれまで、職員が事業者を直接訪問して不法就労者を雇わないよう呼びかけるキャンペーンを展開してきたが、効果が限定的だったことから、インターネットを利用した情報提供システムの導入や、業界団体・市町村との連携強化に加え、報奨金制度を新たに設けることで、情報収集体制を強化する方針だ。
大井川和彦知事「人権に配慮した仕組みを」と強調
大井川和彦知事は記者会見で、「不法就労が全国でもトップクラスという問題解決のために、抜本的な対策を取らないといけない」と述べ、制度の必要性を強調した。一方で、外国人の人権侵害や密告奨励の懸念については、「確認できた不法就労だけを警察に通報する仕組みであり、まじめに働く外国人労働者まで不安に陥れるような事態には絶対にならない」と説明し、人権に配慮した制度設計を目指す意向を示した。県外国人適正雇用推進室の担当者も、「不法就労している外国人よりも、不法に雇用している事業者の情報提供が多くなることを想定している」と述べ、制度の詳細を慎重に詰めていく考えだ。
支援団体からは「差別助長や相談阻害」の懸念の声
しかし、この施策に対しては、外国人支援団体や識者から懸念の声が上がっている。在日ベトナム人を支える日越ともいき支援会(東京)の吉水慈豊代表理事は、「通報制度が始まれば、相談するよりも隠れることを選んでしまう外国人が増える可能性がある」と指摘する。同会の支援事例では、実習先からの解雇やパワハラを理由に失踪し、非正規滞在状態に陥る外国人も少なくなく、通報制度が導入されれば、相談がしづらくなり、万引きなどの犯罪に手を染めるリスクが高まる恐れがあるという。吉水氏は、「困っている人ほど声を上げられない。通報を増やす仕組みよりも、早い段階で安心して相談できる環境づくりが重要だ」と訴えている。
入管庁の類似制度と比較 実績や課題は
入管庁にも同様の通報制度が存在するが、その実績や効果については議論が分かれる。移民政策に詳しい専門家からは、報奨金制度が差別を助長するおそれがあるとの指摘も出ており、茨城県の取り組みが全国的な先例となる可能性がある。県は新年度当初予算案に関連費用を盛り込み、制度の具体化を進めるが、人権侵害や社会的不安を招かないよう、細心の注意が求められる状況だ。
この制度は、外国人労働者への依存が高い茨城県の経済構造を背景に、不法就労の根絶を目指す一方で、共生社会の実現とのバランスが課題となる。今後の展開に注目が集まっている。



