留学生の日本社会定着を目指す教育の最前線
日本への留学生数は2024年度に33万人を超え、過去最多を記録しました。政府は留学生受け入れを40万人に拡大する目標を掲げる一方で、大学が学生確保のために安易に受け入れているとの批判も存在します。こうした状況の中、深刻な人手不足を背景に、留学生の国内就職を促進し、日本社会への定着を支援する教育プログラムに力を注ぐ大学が増えています。
公民テキストから学ぶ日本社会の基礎
2025年12月中旬、埼玉県上尾市にある聖学院大学の教室では、「日本社会」の授業が活発に行われていました。この日は、1年生の留学生約30人が株式会社の仕組みについて学んでいました。授業を担当するのは、中学校で約30年間社会科を教えてきた非常勤講師の松村憲さん(68歳)です。
松村さんが「株はどこで買えますか」と質問すると、学生の一人が「証券取引所」と回答。これに対し、松村さんは「難しい言葉をよく知っていますが、正確には証券会社です」と丁寧に説明しました。この授業では、中学の公民の教科書を教材として活用し、日本の文化や地理、憲法、社会保障制度など多岐にわたる内容を包括的に教えています。
留学生たちは各自に配布されたノートに熱心に筆記し、日本語指導を担当する教員が授業後に毎回添削を行います。この取り組みについて、岡村佳代留学生センター長は次のように語ります。「日本人が当然持っている知識や価値観を学ぶと同時に、専門科目に進むための筆記力や論理的思考力も身につけてもらうことを目的としています」。
留学生に特化した教育プログラムの導入
聖学院大学の全学生1700人のうち、ネパール、中国、ベトナムなどからの留学生が約25%を占めています。特に留学生に人気の高い政治経済学部では、500人を超える学生のうち、半数弱が留学生で構成されています。小池茂子学長は少子化の影響を踏まえ、「留学生は大学の経営基盤にとって非常に重要な存在です。しかし、単に受け入れて終わりではなく、その後の成長を支援することが求められています」と強調します。
同大学では、留学生向けに2つの特別授業を開始しました。これらのプログラムは、卒業後に日本での就職や起業を目指す留学生たちが、社会で活躍するために必要な基礎知識を習得することを目標としています。日本の労働市場や企業文化、法律制度などを理解することで、より円滑な社会参加を促す試みです。
多様な背景を持つ学生たちの学び
授業では、単に知識を伝えるだけでなく、留学生同士のディスカッションやグループワークも積極的に取り入れられています。異なる文化的背景を持つ学生たちが、日本の社会制度について意見を交わすことで、相互理解が深まっています。また、地域社会との連携プロジェクトも実施され、実際の日本社会を体験する機会が提供されています。
このような教育アプローチは、留学生が日本で長期的に定着するための基盤づくりに貢献しています。大学側は、留学生が卒業後も日本社会で活躍し続けられるよう、就職支援や生活相談などの継続的なサポート体制の整備にも力を入れています。



