杉並区で「いじめ重大事態」調査が9件滞留 第三者委員会の限界が浮き彫りに
杉並区いじめ調査9件滞留 第三者委の限界浮き彫り (04.03.2026)

杉並区で「いじめ重大事態」調査が9件滞留 第三者委員会の限界が浮き彫りに

東京都杉並区において、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の調査が進まず、現在9件もの案件が滞留している深刻な状況が明らかになった。この問題は、区教育委員会が設置する第三者委員会の構造的な課題を浮き彫りにしており、被害児童とその家族を長期にわたって苦しめている。

発生から4年、調査は停滞 被害児童は登校不能のまま

杉並区立小学校で2022年春、当時2年生だった悠真君(仮名)が、殴る蹴るなどの暴行を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。法律で定める「重大事態」の要件を満たしていたにもかかわらず、学校の初動対応の鈍さから事実確認が遅れ、発覚から1年後にようやく認定された。

悠真君は現在も不登校を余儀なくされており、家族の期待をよそに、第三者委員会の調査は4年近くにわたって長引いている。 2023年12月末に示された調査報告書の原案には不備が多く、一部の暴行が含まれていないなど、十分な調査が行われていない実態が判明した。

第三者委員会のマンパワー不足が深刻な課題に

杉並区の第三者委員会は、弁護士や医療、心理の専門家などで構成され、定員は7人。2024年5月に弁護士2人が増員されたが、それまではわずか5人で調査を担っていた。委員はいずれもフルタイムの仕事を持っており、悠真君の母は「複雑な事態を調べるにはマンパワーが足りていない」と指摘する。

区教育委員会によると、現在調査中の重大事態は9件にのぼる。少ない委員が多数の調査をこなす厳しい状況は、区議会でもたびたび懸念が示されてきた。2024年2月の一般質問では、区議が「委員は現役の立場で、第一線で活躍している。集中的に多くの時間を捻出し、スピード感を持って調査できるのか」と問題提起した。

区教育委員会は「複数の重大事態の調査と報告書作成を並行して行う現状で、委員から負担を感じているという声も出ている」と認めている。

専門調査員の導入も限界 抜本的な体制強化が急務

日本弁護士連合会が2018年に公表したガイドラインによれば、いじめ重大事態の調査では、延べ50人超の聞き取り調査後も、報告書の作成に100~500時間を要する事例がある。杉並区教育委員会は、昨年4月から第三者委員会の下で事前調査を担う専門調査員を委嘱したが、一人一人にかかる負担は依然として大きい。

悠真君の母は、「今新たに重大事態が認定されると、調査が滞留したところからスタートすることになる。つらい思いをする子がこれ以上増えてほしくない」と訴え、抜本的な体制強化を求めている。SNSを通じて積極的に情報発信を続ける母の活動は、問題の早期解決を求める世論の高まりを反映している。

この問題は、いじめ被害児童の救済を遅らせるだけでなく、教育現場の信頼を損なう危険性もはらんでいる。杉並区における第三者委員会の機能不全は、全国的ないじめ対策の在り方にも大きな問いを投げかけている。