杉並区のいじめ問題、4年経過も解決せず 担任は「解決した」と報告するも児童は不登校のまま
いじめから4年、調査滞り児童は不登校 杉並区の対応に疑問 (03.03.2026)

いじめ発生から4年、調査は停滞し児童の登校再開の見通し立たず

東京都杉並区に住む小学5年生の悠真君(仮名)は、この4年近くにわたり、先の見えない不登校の日々を送っている。2022年春に杉並区立小学校で受けたいじめが、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に認定されながら、区の調査が一向に終わらないためだ。学校や区の対応の不十分さが、長期化する問題の背景にある。

区長への訴え「一生懸命取り組んでたら3年も放置されない」

昨年11月、杉並区役所ロビーで開かれたいじめ防止に関するパネル展で、悠真君は偶然居合わせた岸本聡子区長に苦境を訴えた。「一生懸命取り組んでないから、こうなってるんでしょ。一生懸命取り組んでたら、(いじめは)3年間放置されないよ」。岸本区長が「一生懸命、みんなで(いじめ対策に)取り組んでいくしかない」と応じる中、悠真君の胸中にはやり場のない思いが渦巻いていた。

仲裁がきっかけで6対1の暴行、学校の初期対応に問題

いじめが始まったのは2022年5月18日、悠真君が小学2年生の時だった。クラスの男子グループが女子の腕を引っ張るのを見かけ、仲裁に入ったことがきっかけ。男子6人から顔を殴られる、体当たりをされるなどの暴力を受けた。翌朝、登校に付き添った父親から事情を聞いた校長は「対応します」と約束したが、その後の動きは鈍かった。

校長は加害児童6人を呼び出し「女の子をいじめるのは良くない」と諭したものの、悠真君への具体的な暴行内容を個々に聴き取ることはせず、謝罪も本人たちに委ねたという。その後も5月24日と25日に腹を殴られる、内ももを膝蹴りされるなどの暴行が繰り返され、25日夕方には「決めた!不登校!」と叫び、学校へ行かなくなった。

担任は「解決した」と報告、学校の危機感の薄さ浮き彫りに

母親がすぐに学校に連絡すると、校長は意外そうに「担任は『解決した』と言っています」と応じた。産休の担任に代わってクラスを受け持った教員は、暴行に関わっていない児童も含めクラス全員に「謝罪の手紙」を書かせ、悠真君の母に渡そうとするなど、早々に幕引きを図る姿勢が目立った。

学校が実施した教職員アンケートでは、副校長が「悠真さんはこの日も教室後方入り口の廊下にある机の所に座り教室の様子をうかがっていました」と回答。いじめで教室に入れなくなった悠真君の机が廊下に出されていた事実を、父母に伝えていなかったことも判明した。

調査開始は3カ月後、重大事態認定まで1年

いじめ発生から1カ月後、ようやく校長が区教育委員会に書面で事案を報告。悠真君が不登校になり、弁護士である母親がいじめ防止対策推進法を確認し、校長に「いじめの定義に当たらないか」と指摘したことがきっかけだった。校長は後に区教委に対し、母親に指摘されるまでいじめと認識していなかったと認め、「学級が落ち着かない状況による児童同士のトラブルだと思った」と述べている。

最初の暴行から3カ月経った8月、区教委主導の調査で加害児童らの聞き取りが始まったが、子どもたちの記憶は薄れ、事実確認は思うように進まなかった。区教委は2023年5月、悠真君の件が「児童の生命、身体、財産に重大な被害が生じた疑いがある」などの要件を満たしたとして、「重大事態」に認定。外部専門家による第三者委員会が調査を開始した。

第三者委員会の報告書原案に不備、家族への説明もなし

しかし、第三者委員会の調査は学校側の不十分な聞き取りに依存する部分が多く、2023年12月末に示した報告書の原案では、一部の暴行やいじめに当たる暴言が抜け落ちるなど不備が目立った。その後、悠真君家族には何の見通しも示されていない状況が続いている。

PTSD診断受け不登校継続、母親の悔恨

悠真君は極度の食欲不振や睡眠障害などから心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受け、今も不登校が続く。母親は「学校が適切な対応を取っていれば、状況は全く違っていたかもしれない」と悔やむ。区教委は個別事案について回答を避けている。

この問題は、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に対し、学校や自治体の対応が十分でない実態を浮き彫りにした。児童の心身の回復と早期の学校復帰に向け、関係機関の責任ある対応が求められている。