クマ被害急増で環境省が管理方針を転換 捕獲重視の新ガイドライン発表
環境省は、クマによる人身被害や市街地への出没が相次いでいる状況を重く見て、都道府県が実施するクマの保護・管理計画策定や緊急銃猟に関するガイドラインを全面的に改定しました。これまで保護に重点を置いてきた従来の方針から大きく転換し、今後は捕獲を強化することで、個体数と生息範囲の適正化を図る方針を明確に打ち出しています。
深刻化するクマ被害の現状と新指針の必要性
2025年度の全国におけるクマによる人的被害は、2月末時点の暫定値で238人に達し、このうち13人が死亡しています。本県では死者は出ていないものの、負傷者は24人に上り、深刻な事態が続いています。人に危害を加える恐れのあるクマについては、排除を徹底することが不可欠であり、捕獲に重きを置いた新指針の導入は、現状を踏まえた妥当な判断と言えるでしょう。
県境を越えた個体群ごとの捕獲方針と数値目標
新ガイドラインでは、県境をまたいで分布する「個体群」ごとに捕獲方針を定めることを明記しました。本県と山形県、新潟県などにまたがる三つの個体群には、いずれも成獣800頭程度以上のクマが生息しており、環境省は東北地方全体のクマを現在の推定値1万9千頭超から、2030年度までに約6千頭減らすという具体的な数値目標を設定しています。
本県では、現行の管理計画が本年度で終了することから、新ガイドラインに基づく改定作業を進めています。2025年度には約1,700頭のクマを捕獲しましたが、これまで捕獲目標は設定されていませんでした。今回の改定では、ガイドラインを踏まえて目標設定を検討し、個体群がまたがる隣県と連携しながら、捕獲を着実に推進していくことが重要です。
「排除エリア」指定によるゾーニング管理の強化
人とクマのすみ分けを図る「ゾーニング管理」についても、従来の区分を見直しました。市街地や農地などを「排除エリア」と指定し、このエリア内に現れたクマは原則として捕獲する方針です。排除エリアの周辺には「管理強化エリア」を設け、クマの定着防止や排除エリアへの侵入防止に努めます。
排除エリアでは、基本的な対策として以下の点が示されています:
- クマを引き寄せる果実や家畜の適切な管理
- 農地への電気柵の設置の推進
- 生ごみなどの餌となるものの徹底した処理
これらの対策を通じて、クマが生息しにくい環境を整え、すみ分けを強化していくことが求められています。
緊急銃猟の実施体制と課題
緊急銃猟に関するガイドラインは、市街地でも自治体の判断で実施が可能となった2024年9月以降の事例を基に、対応した人員数や時系列、実施した通行制限の概要などを詳細に紹介しています。これにより、各自治体が実情に合わせた計画を立てやすくなることが期待されます。
しかし、郡山市の中心部に近い富田町の市街地で先週行われた緊急銃猟では、クマが目視できない場所に移動したり、発砲した弾が跳ね返る危険性があったりして、実施に踏み切るまでに時間を要しました。市街地での緊急銃猟は、まだノウハウが不足しているのが実情です。有効な事例の共有を図り、各自治体の実情に沿った計画を支援していくことが、国には強く求められています。
今回のガイドライン改定は、クマ被害の増加という緊急課題に対処するための重要な一歩です。捕獲重視への方針転換とゾーニング管理の強化により、人とクマの共存に向けた新たな枠組みが構築されることが期待されます。



