肥料価格が国際的に上昇する中、国内では肥料の輸入依存からの脱却に向けた動きが加速している。特に注目されているのが、人のし尿などから生まれる下水汚泥の資源活用だ。国土交通省によると、国内では年間約234万トンの下水汚泥が発生し、その約15%が肥料として利用されている。
神戸市の取り組み
神戸市では、下水汚泥にマグネシウムを加えて「リン酸マグネシウムアンモニウム」の結晶を取り出す技術を開発。2011年度から研究を開始し、現在は市内2カ所の施設で最大200トン程度の再生リンを回収できる能力を持つ。回収された再生リンは1キロ50円ほどで肥料メーカーに販売され、配合肥料「こうべハーベスト」の原料として使用されている。化学反応により結晶化させるため、重金属などの不純物が混入しにくい特性があるという。
市は現在、新たな施設を建設中で、将来的には300トン規模の回収を目指している。市の担当者は「コストはかかるが、安定して農家に肥料を供給するための取り組み」と説明する。
全国に広がる再生リン施設
再生リンの生産施設は、東京都や島根県など8都県市に11施設が整備されている。しかし、下水汚泥には重金属や有機フッ素化合物(PFAS)が含まれるリスクが指摘され、農家が使用を避ける一因となっている。また、コストの高さも課題だ。
堆肥活用の可能性
下水汚泥以外にも、家畜ふん尿や食品廃棄物を原料とした堆肥の活用も進んでいる。堆肥は土壌改良効果もあり、化学肥料の代替として期待されている。国は堆肥の利用促進に向けた支援策を強化しており、農家の間でも関心が高まっている。
今後の展望
肥料の輸入依存からの脱却には、技術開発やコスト削減、品質管理の徹底が不可欠だ。下水汚泥や堆肥の活用は、持続可能な農業の実現にも寄与する可能性がある。専門家は「安定的な肥料供給には、多様な資源を組み合わせた戦略が必要」と指摘する。
一方で、農家の間では「コストが高くて手が出ない」「品質に不安がある」との声も聞かれる。国や自治体は、これらの課題解決に向けて研究開発や普及啓発を進める必要がある。



