燃やすしかない廃プラスチックや衣類ごみを、もう一度原料に戻せないか――。そんな夢のような発想から新たな挑戦が動き出している。岐阜大学工学部の入沢寿平准教授(46)は、炭素製品メーカーの東洋炭素(大阪市)などと、使い道を失った炭素資源を循環利用する「カーボンリサイクル」の研究拠点を大学内に立ち上げた。産学連携で技術を磨き、実用化を目指している。
「座礁資源」の活用が鍵
研究の鍵を握るのが「座礁資源」と呼ばれる存在だ。石油の残りかすや廃プラスチック、廃タイヤ、衣類など、本来は資源でありながら使われず、焼却処理に頼ってきた炭素材料を指す。二酸化炭素排出の削減が求められる中、その処理の在り方が課題となっている。
入沢准教授らはこうした資源を化学処理によって分解し、いったん原油のような状態にまで戻した上で、再びプラスチック原料や燃料、炭素材料へと作り直すことを目指す。原油に近い形にできれば、既存の石油精製の仕組みを活用して、多様な製品への再利用が期待できるという。
資源安全保障への貢献
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、不安定な中東情勢の影響も受けやすい。入沢准教授は「国内にある炭素を循環させることは、資源安全保障の面でも重要だ」と意義を語る。「将来的に資源が枯渇していく中で、日本が資源大国に近づく可能性もある」と野心をのぞかせる。
研究段階と今後の目標
研究はまだ初期段階にある。技術の成熟度を示す10段階指標「TRL」は1~2程度で、基礎的な検証が始まったばかりだ。資源を分解する変換効率も現状は1~2割程度にとどまるが、将来的には5割程度まで引き上げることを目標に据えている。2030年ごろまでの技術確立と、その後の実証プラント整備を見据える。
産学連携の体制
九州大学や京都工芸繊維大学と連携し、分解から再資源化までを分担。今年秋には企業の参画を募るコンソーシアムの設立も予定している。化学繊維と天然繊維が混ざった混紡素材の衣類など、リサイクルが難しい分野にも道を開く可能性があるという。
漫画「ドラえもん」に登場する「タイムふろしき」のように、使い終えたものをもう一度よみがえらせる新技術。入沢准教授は「『脱炭素』ではなく、炭素を使い続ける『炭素循環』の社会を実現したい」と話す。夢のような仕組みを現実にしようとする挑戦が、岐阜から進んでいる。



