福島県相馬市を流れる宇多川で、記録的な不漁が続くサケ漁について、相馬双葉漁協が本年度から一時休止することを決定した。温暖化に伴う海水温の上昇や稚魚の放流数の減少が影響しているとみられ、早期の回復は見通せないと判断した。半世紀近くにわたって受け継がれてきた伝統のやな漁が途絶えることになるが、関係者は再開に向けて模索を続ける。
漁獲量の激減
同漁協によると、2018年度までの5年間は年平均2万匹を水揚げしていたが、2019年度には117匹と激減。2023年度には100匹を下回り、直近の昨年度は過去最低の32匹にとどまった。今後も厳しい漁況が予想されることから、漁を当面見送ることにした。
サケの生態と不漁の原因
サケは冷水を好む回遊魚で、外洋で成長し、3~5年後に故郷の宇多川に産卵のために戻ってくる。高水温や餌の減少などにより、大半が途中で死滅したとみられる。かつて1%あった回帰率は0.01%まで落ち込んでいる。
サケ漁は、卵から育てた稚魚を春に放流し、大きく育った親魚を秋に捕獲して利益を出す。しかし、深刻な不漁で卵を確保できず、そのサイクルが崩れた。昨年度の放流数は1万5000匹と、2018年度のわずか0.5%にとどまる。運営に必要な経費は年間数百万円で、このまま続けても赤字幅が拡大するだけという。
ふ化場の現状
市内のふ化場は市が所有・管理している。今後も5~10月は県栽培漁業協会がアユの親魚を養成する計画だが、これまでサケの稚魚育成に充てていた時期の活用は未定としている。
やな漁の伝統と再開への期待
宇多川でサケのやな漁が始まったのは1980年。川をせき止め、遡上する魚の習性を利用して岸に誘う伝統漁法は、晩秋の風物詩として市民に親しまれ、子どもたちは放流体験を通して自然や命の大切さを学んできた。漁を休止しても、県内外から卵を移入して稚魚を育てる方法があるという。
同漁協指導部長の小野勝さん(55)は「全国的に凶漁で、どこも卵を提供する余裕がない」と指摘した上で、海水温の上昇をもたらす「黒潮大蛇行」が終息した点に触れ、「環境が回復する兆しも見えてきた。漁の再開へあらゆる可能性を探っていく」と先を見据える。



