岩手県のサケ漁獲量が過去最低の117トンに 環境変化で深刻な減少
岩手県内のサケ漁獲量が近年、著しい減少傾向を示しており、2024年度にはわずか117トンと過去最低を記録しました。これは前年度の134トンを17トン下回る深刻な数字です。サケは外洋を回遊し、3年から5年後に故郷の川に産卵のために戻ってくる習性がありますが、県の関係者によると、海水温の上昇や餌の減少が主な原因で、多くのサケが回遊途中で死亡したと推測されています。
漁獲量の推移と危機的状況
岩手県はサケを「県の魚」として定めており、かつては豊かな水産資源を誇っていました。1990年代には年間3万トンから5万トン前後で推移し、1996年度には過去最高の7万3526トンを記録しました。しかし、2000年代以降は減少が続き、2018年度を最後に1万トンに届かなくなりました。近年は特に急激な落ち込みを見せており、2022年度が446トン、2023年度が134トン、そして2024年度が117トンと、2018年度と比較すると約100分の1にまで激減しています。2025年度も今年1月31日時点で約42.5トンとさらに減少する可能性が高く、状況は極めて厳しいです。
県水産振興課の担当者は「漁獲量が減れば卵が採れず、ますます減ってしまう悪循環に陥ります。県のシンボル的な魚だけに、これは危機的状況です」と懸念を表明しています。
人工孵化・放流事業への影響
漁獲量の減少は、サケの卵の採取数にも直接的な影響を及ぼしています。県さけ・ます増殖協会によると、2025年度の県内でのサケ採卵数は今年1月31日時点で1328万4000粒と、昨年同時期の約6割程度しか確保できていません。ここ数年は、北海道などから卵の提供を受けて稚魚を育てることでしのいでいますが、北海道でも不漁が続いており、この支援がいつまで継続できるかは不透明な状況です。
サケの「人工孵化放流事業」は、同協会や県内各地の漁協などが運営し、卵から育てた稚魚を放流して数年後に成魚を捕獲する仕組みです。この事業は一定のサイクルで回っていますが、漁獲量の減少が続けば、事業そのものの存続が危うくなります。
回復への取り組みと展望
同協会の五日市周三専務理事は、「今できることは、故郷に帰ってくるサケから可能な限り採卵し、大型で健康な稚魚を育てることです。適切な時期に放流し、サケが帰ってきやすい環境を整えることが重要だ」と述べています。また、日本列島の南岸を流れる黒潮が大きく南に蛇行する「黒潮大蛇行」が終息したことで、サケが育つ環境が回復する兆しも見えてきたとして、地道な取り組みの継続を強調しています。
岩手県のサケ資源は、気候変動や海洋環境の変化に直面する中で、持続可能な管理と保護が急務となっています。関係者は、伝統的な漁業と生態系のバランスを保つための努力を続けています。



