奈良の喫茶「グリーンとんねる」、亡き相棒との思い出を胸に82歳店主が営み続ける
奈良の喫茶「グリーンとんねる」、82歳店主が亡き相棒と共に営む (23.02.2026)

奈良の喫茶「グリーンとんねる」、亡き相棒との思い出を胸に82歳店主が営み続ける

奈良県奈良市の田原地区に、茶畑と田んぼが広がるのどかな風景の中、「喫茶グリーンとんねる」はひっそりと佇んでいます。コーヒーカップを描いた看板を掲げ、笑顔で客を迎えるのは、82歳の店主・森本美智子さんです。「明るく楽しい店であることを心がけています」と語る森本さんは、亡き相棒との思い出を胸に、今日も店を切り盛りしています。

地元食材を活かした家庭的な味わい

市街地から車で約30分の場所にあるこの店は、喫茶と食堂を兼ねています。森本さんは「安心して食べてもらいたい」という思いから、定食や軽食には地域で取れた野菜や米、卵などをふんだんに使用。店内には花や緑が飾られ、温かな雰囲気が漂います。

オムライスや野菜カレーも人気ですが、特に店を代表する味が「茶がゆ定食」(900円)です。奈良の郷土料理である茶がゆは、煮出したほうじ茶に冷や飯を入れて炊いたもの。森本さんは子どもの頃から親しんだこの味に一工夫を加え、田原地区産のほうじ茶に冷や飯と、同地区で取れた小豆を湯がいて入れる「グリーンとんねる流」を確立しました。

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ほうじ茶の香ばしい香りと程よい塩味が特徴で、優しい味わいが楽しめます。定食には、カボチャやサツマイモなどの野菜の煮物、小松菜のおひたし、手製の漬物など、旬の地元野菜を使った小鉢が数多く付いてきます。春にはワラビやツクシ、タケノコなど地元の山菜料理も提供され、メニューから季節の移ろいを感じられるのも魅力です。

ランチを食べに時々立ち寄るという物流会社社長の国川星太郎さん(63)は、「値段も手頃で、料理には手作りの温かさがある」と評価しています。

定年後に実現した夢、そして相棒との別れ

店がオープンしたのは2004年6月。森本さんは子どもの頃から「食べ物屋さんをやること」が夢でしたが、結婚後はJA職員として働きながら2人の娘を育てる日々を送り、なかなか実現できませんでした。定年を迎えた際、「始めるなら今」と決意し、仲の良かった兄嫁の杉本月子さんを誘い、61歳で店を開きました。

退職金をはたいて、兄の自動車店の隣に店を設け、シンクやコンロを2か所据え付けました。森本さんが喫茶メニューを、杉本さんが食事メニューを担当し、けんかもせず何でも相談しながら店を続けてきました。しかし、昨年、杉本さんが体調を崩し、78歳で亡くなりました。それまで胃がんや膵臓がんを患いながらも乗り越えてきた杉本さんは、「一緒に頑張りたい」と体の動く範囲で尽力してくれていたといいます。

店内の壁には、開店祝いの写真や地元紙の記事などが掲示され、二人三脚で歩んできた歴史が感じられます。森本さんは「月子さんは煮物や煮付けを作るのが上手で、アイデアをたくさん出してくれた」と振り返ります。今は友人に時々手助けしてもらいながら、一人で店を続けています。

客との交流が支えに

大切な相棒を亡くした森本さんの元気の源は、客との交流です。開店当初から店に置いている「今日の思い出」と題したノートには、国内外からの来店客が店へのエールや料理の感想、絵や俳句などを思い思いに書き込んでいます。これは森本さんと杉本さんが、客にとっても二人にとっても思い出に残るものをと考えて始めたもので、現在3冊目になります。このノートが森本さんの大きな励みとなっています。

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「二人で始めた店だから、灯を消すのはもったいない。一人は大変だけど頑張って続けたい」と語る森本さん。ハキハキと元気な声で接客するのは、「せっかく来てくれる人たちに気持ちよく過ごしてほしいから」だといいます。

こぢんまりとした店で味わう家庭的な料理は、身も心も温かくし、まるで実家で過ごしているような気持ちにさせてくれます。森本美智子さんは、亡き相棒との思い出を胸に、今日も笑顔で客を迎え入れています。