里親による里子への暴行事件、行政の見守り体制に疑問の声
広島県福山市で発生した、里親が里子の顔を踏みつけるなどした暴行事件が、社会に衝撃を与えている。2026年3月13日、広島地裁福山支部で、男性被告人(31歳)に対し、拘禁刑1年2カ月執行猶予4年の有罪判決が言い渡された。この事件は、里親制度における行政の支援体制の課題を浮き彫りにした。
事件の経緯と裁判の詳細
検察側の冒頭陳述によると、男性は2022年に結婚し、子どもができなかったことから、夫婦で養子を迎えることを検討し始めた。2024年4月、広島県東部こども家庭センター(福山市)で職員と面談を行い、住宅訪問調査や里親研修を経て、同年10月に里親として正式に登録された。
夫婦は翌年4月から乳児院にいた当時1歳の男児と交流を開始し、施設や自宅で面会を重ねた。5月末からは里子として男児を預かり、妻は約3カ月間の育児休暇を取得して、3人での生活が始まった。しかし、里子を迎えてからわずか3カ月後、男性は男児の顔を蹴ったり踏みつけたりする暴行を加えた。
行政の見守り体制とその限界
広島県こども家庭センターの職員らは、月に2回ほど訪問して、夫婦の暮らしぶりを確認していた。しかし、この定期的な訪問にもかかわらず、暴行の異変を事前に察知することはできなかった。検察側は、就労状況の変化などがあった可能性を指摘し、「わかっていたら…」と悔やむ声もあったという。
この事件は、里親制度において、行政が十分な支援や監視体制を整えられていない現実を露呈させた。里親への研修や訪問だけでは、潜在的なリスクを完全に防ぐことは難しく、より綿密なフォローアップや心理的サポートの必要性が叫ばれている。
社会への影響と今後の課題
里親制度は、家庭環境に恵まれない子どもたちに温かい家庭を提供する重要な仕組みである。しかし、今回の事件のように、里親自身が虐待に走るケースが発生すると、制度全体への信頼が揺らぎかねない。専門家は、以下の点を改善すべきだと指摘する。
- 里親への定期的なメンタルヘルスチェックの導入
- 訪問調査の頻度や質の向上
- 緊急時の相談窓口の拡充
広島県こども家庭課は、事件を受けて支援体制の見直しを検討しているが、具体的な対策はまだ明らかになっていない。子どもの安全を最優先に、行政と地域が連携した取り組みが急務となっている。
この事件は、単なる個人的な犯罪ではなく、社会全体で子育て環境を支えるシステムの脆弱性を映し出している。里親制度の健全な運営に向けて、早急な改革が求められるだろう。



