国土交通省北陸信越運輸局は、長野県木曽地域振興局と連携し、「宿が足りない」と指摘されてきた木曽地域の宿泊施設に関する実態調査を昨年9月から今年3月にかけて実施した。調査の結果、地域全体では宿泊供給が不足しているわけではなく、外国人宿泊者が特定の旅館に集中している現状が明らかになった。運輸局は報告書をホームページで公開し、自治体ごとの需要と供給のバランスを示すとともに、宿泊客増加に向けた施策を提案している。
調査の背景と目的
木曽広域連合の木曽路観光推進室によると、外国人観光客の間では旧中山道を北上する旅行が人気で、馬籠宿(岐阜県中津川市)から妻籠宿(南木曽町)を徒歩で巡り、JR木曽福島駅(木曽町福島)周辺に宿泊し、藪原駅(木祖村)から鳥居峠を越えて奈良井宿(塩尻市)に至る行程が一般的となっている。
長野県の統計によれば、木曽地域の外国人延べ宿泊者数は2010年の4千人から2019年には3万人に増加した。一方、日本人を含む木曽の観光地の延べ利用者数は1990年代に500万人台を記録したが、その後減少傾向が続き、2019年には225万人に落ち込んだ。コロナ禍を経た2024年には238万人に回復したものの、日帰り客が78%を占めている。報告書では、「宿泊したかったが予約が取れなかった」という観光客の声が多く寄せられていることも指摘されている。
今回の調査は、これまで可視化されていなかった宿泊施設の需給バランスを把握し、宿泊客の増加につなげる目的で実施された。木曽郡6町村と旧中山道で結ばれる塩尻市奈良井地区、岐阜県中津川市馬籠地区の旅館やホテル、ゲストハウスなど計199施設にアンケートを依頼。105施設から回答を得て、そのうち18施設には追加の聞き取り調査を行った。
月別客室稼働率の実態
月別の客室稼働率調査から、年間の繁忙期と閑散期の分布が明らかになった。木曽町の施設は7月から11月にかけて37~47%と需要が集中。南木曽町は3月から12月にかけて50~70%台を維持した。一方、木祖村は10%以下の月が10カ月、王滝村も6カ月あり、宿泊客を十分に取り込めていない実態が浮かび上がった。
自治体別の需給バランス
報告書では、宿泊施設からの回答を基に自治体別の需給バランスを掲載。客室の販売量を円形の大きさで示し、木曽町については「木曽地域最大の受け皿であるが、効率は高くない状態」と指摘。南木曽町は「需給のバランスが比較的良好に成立している中核供給地」と評価され、木祖村と王滝村は「相対的に需要不足」とされた。
外国人旅行者の動向
外国人の動向調査も実施された。外国人延べ宿泊者数のうち、旅館の宿泊者数は59%を占め、報告書では旅館が「外国人需要の最大の受け皿」と分析。ゲストハウスなどの簡易宿所も「需要と供給のバランスがほぼ一致している状態」とされた。
今後の施策提案
報告書では、冬から春にかけて客室稼働率が低下する自治体が多いことから、この時期に観光客を呼び込む体験プログラムやツアーの造成を提案。「地域全体の宿泊キャパシティーには余力がある」として、夕食を楽しめる飲食店や周遊・消費につながる拠点の整備も提案している。
長野県木曽地域振興局の小林弘一局長は今月27日の定例記者会見で、「木曽全体で需要を創出しなければならない。もっとお客さんに来てもらい、滞在してお金を使ってもらうことで地域が活性化する取り組みが必要」との認識を示した。
長野県は4月、木曽広域連合に参画し、広域観光などに関する業務を移管した。移管に伴って新設された木曽路観光推進室の担当者も「実態をデータで把握することができた。冬季の誘客を優先して取り組みたい」と話している。



