DNA型鑑定不正めぐる裁判で有罪判決、佐賀地裁が鑑定書の信用性を認定
佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)で発生したDNA型鑑定不正問題を背景に、証拠能力が争われた覚醒剤取締法違反(使用)事件において、佐賀地方裁判所は2026年2月25日、鑑定書の信用性を認める有罪判決を言い渡しました。山田直之裁判官は、被告に対し拘禁刑2年4カ月(うち6カ月は保護観察付き執行猶予2年)を宣告しました。検察側の求刑は拘禁刑3年でした。
科捜研職員による異例の証人尋問と弁護側の主張
本件では、被告が覚醒剤を自己の体に注射したとの起訴内容を認めていたものの、弁護人が覚醒剤成分が検出されたとする尿の鑑定書の証拠採用に同意せず、無罪を主張していました。このため、科捜研職員自らが鑑定について説明する異例の証人尋問が実施されました。
最終弁論において、弁護人は「不正の根本的要因は除去されておらず、長期間にわたり鑑定不正が行われていた科捜研が、必要な措置が講じられない状況で作成した鑑定書を有罪の証拠とすることは困難である」と強く主張しました。佐賀県弁護士会も、鑑定不正を受けて「科捜研の鑑定に対する信用が失墜した」として、所属弁護士に対し鑑定証拠の不同意を検討するよう促していました。
裁判所の判断「鑑定書の信用性は揺るがない」
判決は、弁護側の主張について詳細に検討した上で、「鑑定の具体的な手法について問題点を指摘するものではない」と指摘しました。さらに、「科捜研の組織上の問題点などは、個々の鑑定の信用性に直ちに結びつくとは言い難く、弁護人の指摘に照らしても、本件鑑定書の信用性は揺るがない」と明確に判断しました。
弁護人を務めた長戸和光弁護士は判決後、「鑑定書については個別具体的な主張を求められたということだろう」とコメントし、控訴は行わない方針を示しました。
鑑定不正問題の法廷への波及と今後の展開
DNA型鑑定不正をめぐっては、本件以外にも証拠不同意とした刑事裁判が複数件審理中です。中には、1つの事件で複数の鑑定人に対する証人尋問が見込まれているケースも存在します。この問題は、科学捜査の信頼性を根本から問い直す事態に発展しており、司法現場に大きな影響を与え続けています。
佐賀地裁の今回の判決は、組織的不正が発覚した場合でも、個別の鑑定結果の証拠能力を厳密に審理する司法の姿勢を示したものと言えます。しかし、科捜研の鑑定プロセス全体に対する信頼回復は依然として課題として残されており、今後の関連裁判の行方に注目が集まっています。



