公安委員会が「深刻」「ありえない」と指摘 佐賀県警DNA鑑定不正問題の内部議論が明らかに
佐賀県警科学捜査研究所で発生した技術職員による不正なDNA型鑑定問題をめぐり、独立した第三者機関による調査を求める声が高まっている。これに対して県警側は「『第三者性』を有する公安委員会が県警の調査を確認している」として、外部調査を拒否している。では、実際に公安委員会はどのような議論を行っていたのだろうか。
情報公開請求で明らかになった公安委員会の内部記録
朝日新聞が佐賀県の公安委員会の議論内容がわかる資料を情報公開請求した結果、県警は「DNA鑑定に係る不適切事案について」と題する文書を開示した。この公開請求は昨年10月に行われ、県警は11月に公安委員会に関連する文書を提供している。
県警監察課によれば、この文書は監察課が公安委員会への報告内容を記録しておくために作成されたものだという。開示されたのは昨年1月から8月にかけて開催された公安委員会定例会のうち、鑑定不正問題について報告がなされた6回分の記録である。
「報告事項」や「議事概要」が公開されたが、発言した公安委員の氏名など一部の情報は黒塗りにされていた。こうした部分的な開示にもかかわらず、委員会内部での強い懸念が浮き彫りとなった。
「虚偽の鑑定実施期間記載」という重大な不正
公開文書によると、1月16日の報告事項として「科学捜査研究所の職員が、2017年から2024年までの期間、虚偽の鑑定実施期間を記載するなどしたDNA型鑑定に関する文書を作成し、鑑定後の報告を長期間放置していた」という内容が記録されていた。
この問題について公安委員からは「DNA鑑定の信頼性に関わる深刻な事態だ」という指摘や、「このような不正が長期間にわたって見逃されていたことはありえない」といった厳しい意見が相次いでいたことが判明している。
委員会内部では、県警の内部調査体制そのものに対する疑問の声も上がっていた。一部の委員からは「同じ組織内での調査では客観性に欠けるのではないか」という懸念が表明されていたという。
第三者機関調査を拒否する県警の姿勢
こうした公安委員会内部の強い懸念表明にもかかわらず、佐賀県警は外部による独立調査の実施を拒否し続けている。県警側は「公安委員会という第三者性を有する機関が監視している」という立場を堅持しており、新たな調査体制の構築には消極的だ。
この問題では、懲戒免職処分となった技術職員が少なくとも7年間にわたり不正な鑑定文書を作成し続けていたことが明らかになっている。虚偽の実施期間記載に加え、実際には行われていない鑑定を報告した疑いもあるという。
警察庁も特別監察を実施するなど、問題の深刻さを認識しているが、捜査への具体的な影響については「19件で影響が不明」としており、全容解明には至っていない。
司法手続きへの波及と信頼回復への課題
DNA型鑑定不正問題の余波は、すでに法廷にも及んでいる。最近の裁判では、科捜研職員に対する異例の尋問が実施される事態も発生しており、司法手続き全体への影響が懸念されている。
全国で年間約20万件実施されているDNA型鑑定は、現代の捜査に欠かせない技術となっているが、その重要性ゆえに過信やずさんな管理が生じやすい環境にあるとの指摘もある。
佐賀県警の幹部は「重大事案であることは認識している」としながらも、本部長自らが臨時会見を開く必要性については慎重な姿勢を示している。公安委員会の厳しい指摘が明らかになった今、県警の対応がさらに注目されることになりそうだ。



